「減反廃止宣言」後の5年間、減反廃止によって得られる政策効果とは真逆の現象が起きた。減反廃止で農家は自由にコメを作れる。しかし、昨年の作付面積の増加は前述のとおり、わずか1%。災害などもあって作柄が悪かったため、生産量は逆に減ってしまった。さらに、来年度(19年度)の予測生産量は0.5~0.7%減と、増産になっていない。コメ価格にいたっては、15年から18年まで、4年連続の上昇だ。私たちは、高いコメを買わされ続けている。

 価格上昇は消費者だけの問題ではない。飼料用米増産などのあおりを受けて品薄となった業務用米の価格が30%もアップし、町の弁当屋やおせんべい屋からは「経営ができない」と悲鳴が上がっている。

 そこに加えて前述の新たな二つの補助金だ。これでは減反廃止はかけ声だけ、安倍政権の本音は減反強化だと疑われても仕方ないだろう。

■国会素通りのバラマキ政策と備蓄米買い上げ拡大は露骨な選挙対策

 これらの政策は、もちろん、4月の統一地方選、7月の参院選対策という側面が強い。大票田の農協や農家から票を回してもらうためには、米価は下げられない。しかし、建前上は、減反廃止政策は18年からスタートしてしまったので、表向き、それを逆行させることはできない。そこで補助金をバラまき、農業票を確保しようという政策が拡大する。

 実は、ただ補助金を出すだけなら、法律改正は不要だ。法改正が必要だと、それについて所管の国会の委員会で、何日かかけてその是非について審議される。

 一方、ただの補助金なら法改正は不要で、国会では、全ての他の予算と一緒に予算委員会で審議されるだけだ。100兆円を超える予算のごく一部なので、それだけを取り上げて国会で詳しく論議されることもほとんどない。国会やメディアのチェックが及びにくい分、減反廃止政策と逆ベクトルの補助金をバラまく矛盾を指摘されることもないのだ。

 農家に対する直接の補助金ではないが、コメの需給を引き締めるための別の政策も行われている。日本経済新聞(2月24日)によれば、農水省は19年から備蓄米の買い入れ上限を前年より5%多い年間20万9140トンとした。

 TPP11では、日本がオーストラリア産米の輸入枠を設定している。豪州産米が増えた分だけ需給が緩み、価格が下落するので、その分、国産米を政府が買い上げれば需給が締まり、民間取引を高値で維持できるという計算だ。農水省はこれまでに2回の買い入れ入札を実施したが、買い入れ額は1俵(60キロ)1万3800円前後と前年より6%高かったそうだ。これには、外食業者やコメの卸売業者も怒り心頭だろう。

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