■エサ米増産とカルテル組織で減反維持

「減反維持政策」の中でも一番効果を発揮したのが、飼料用米の生産に対する補助金の引き上げだった。元々、主食用米の生産を減らすために水田で麦や大豆、飼料用米などを生産した農家に補助金を出していたのだが、このうち、飼料用米の生産に対する補助金を14年度から、最大2.5万円/10a引き上げて10.5万円/10aとした。これによって、飼料用米を作れば確実にもうかることになり、主食用米から飼料用米への転換が進んだ。「減反廃止宣言」前の13年度の飼料用米生産は11万トンだったのが17年には48万トンと約5倍にまで増えたのだ。政府は、さらにこれを増やして、将来的には110万トンまで増やすというから驚きだ。

 さらに、補助金以外にも減反維持の動きは強まった。生産量の配分から国が手を引いた後も、全国農業協同組合中央会(JA全中)が核となる事実上のカルテル組織を17年末に作ったのだ。もちろん、露骨な生産量配分の強制を伴う生産カルテルを行うことはできないが、新たな全国組織は、コメの需給や産地と需要者を結ぶ情報の提供という名目で、カルテルすれすれの行為を行うことはできる。

 こうした農協や農水族議員による減反維持の動きの効果もあって、18年もコメ価格は上昇した。しかし、その背景には、天候不順や災害などによる不作の影響があり、彼らは結果に満足しなかったようだ。とりわけ、18年度のコメ生産面積が1%増えたことが問題視された。本来減反が廃止されたのなら、作付面積は大幅に増えてもおかしくない。その中で、1%増という結果ならまずまずと考えてもよさそうだが、彼らにとっては、わずか1%でも、許されないようだ。その1%が蟻の一穴となり、いずれ大幅増産、米価下落、農家の経営難となっていく可能性があるからだ。

■どこまでも続く減反維持政策が示す「減反廃止」はかけ声だけ

 こうした農協と農水族の圧力に負けたのか、18年4月の「減反廃止」から1年も経たないうちに、さらなる減反維持の動きが出てきている。

 具体的には、19年度予算で農水省が二つの補助金をこっそりと予算計上していた。対象となるのは(1)大豆や麦などの転換作物が拡大し主食用米の作付面積を減らした場合に0.5万円/10aを加算する「31年度緊急転換加算」、(2)主食用米の作付面積を減らして、特に園芸作物などの付加価値の高い作物向けの面積を増やせば、2.0万円/10a加算する「高収益作物等拡大加算」である。加算額は小さいように見えるかもしれないが、いずれも主食用米の減産を促す有力な動機となる。紛れもない減反強化政策だ。
 

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真逆の現象が…