以上のような政策は、食糧を生産してくれる大切な農家を守るための政策だから仕方ないと思う人もいるかもしれないが、実はその結果、ほとんどの国民はとんでもない損をしているということがあまり自覚されていない。

 国民から見れば、農家に莫大な補助金を支払うために国に税金を取られている。しかも、その政策のおかげで、コメの需給が引き締まり、その分高いコメを買わされているのだ。踏んだり蹴ったりとはこのことではないか。とりわけ、ワーキングプアと言われる、フルタイムでちゃんと働いているのに年収200万円以下という庶民層もコメ農家のために消費税を払わされていることを意識すれば、この政策に対する批判が、一気に高まってもおかしくない。

 さらに、安倍政権が進めている政策は、日本の農業を競争力のある輸出産業にするために必要な3条件に完全に逆行する政策だ。その3条件とは、生産量を上げ、価格を下げ、付加価値を上げること。私は、これを「上げ、下げ、上げ」の3条件と呼んでいる。しかし、今の安倍政権の政策は、生産量を下げ、価格を上げ、飼料用米増産のように付加価値を下げる政策を採っている。コメ農業を衰退させる必殺政策と言って良いだろう。

■どうしても思いつかない安倍政権による「改革の成果」

 これまで述べてきたことから、安倍政権が進める「減反廃止」は「口だけ」だということが理解していただけると思う。日本の農業を発展させるために本気で減反改革を断行しようという気持ちなどさらさらないのだ。

 この一件だけではない。アベノミクス成長戦略メニューは改革の名に値しないものばかり。安倍総理はしきりに改革者を装っているが、既得権益層と癒着した安倍政権は、本気で戦うことはできない。

 そこで、派手な改革スローガンをぶち上げて「やっている感」を演出しているのだ。そして、その後は、知らんぷり。

 安倍政権になって、構造改革でどんな成果が上がったか、いろいろ考えてみたが、どうしても大きな成果は思いつかない。

 最近の長期政権、あるいはリーダーシップの強い政権を思い浮かべると、中曽根康弘内閣では、日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社の3公社民営化という大改革を断行した。橋本龍太郎総理は、省庁再編で銀行局と証券局を大蔵省から切り離して金融庁を作り、建設省・運輸省を合体して国土交通省、自治省と郵政省などを統合して総務省、厚生省と労働省を統合して厚生労働省を作るなど、官僚を敵に回して歴史に残る改革を行った。小泉純一郎内閣も郵政民営化、道路公団民営化という改革に大ナタを振るっている。

 それと比べて安倍政権はどうだろう。史上最長政権に近づいているなどとマスコミははやし立てているが、ただ長いだけで、困難な改革に挑んだ形跡さえない。

「改革レガシーなき長期政権」――それが安倍政権の正体なのだ。

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