そんな紀平が来季も世界のトップをひた走る可能性は大きい。18年世界ジュニア選手権優勝のアレクサンドラ・トゥルソワやロシア選手権で優勝したアンナ・シェルバコワのロシアジュニア勢はシニアに上がってくればSPにも4回転を入れてくるだろうが、ジュニアGPファイナルでは両者ともにフリーで2本ずつ跳んだ4回転ルッツでミスをしたように、まだその成功確率は高くないからだ。
さらに、彼女たちがトリプルアクセルを跳んでいないという点も紀平にとって追い風だ。ジュニアGPファイナルでトゥルソワは4回転トーループだけは成功させたが、その時のGOE加点は0.54点で技術点は10.04点。それに対して紀平はGPファイナルのSPのトリプルアクセルで2.51点の加点をもらい、NHK杯フリーの単発のトリプルアクセルは3.09点の加点を得た。また、それぞれの技術点は10.51点、11.09点をマークしており、GOEも確実に稼げるジャンプにまでしている強みがある。
ロシアのジュニア勢も来季は複数種類跳んでいる4回転の完成度を高めてくる可能性はあるが、高難度のジャンプを紀平のトリプルアクセル並みのGOE加点レベルまで仕上げるのは大変なことだ。GPファイナルフリーでは最初のトリプルアクセルがダウングレードと判定されながらも合計233.12点を記録した紀平は、エフゲニア・メドベージェワ(ロシア)が17年国別対抗戦で出した旧ルールでの歴代世界最高である241.31点を上回ることができる可能性も示している。
紀平は「完成するまでは4回転を入れない」と口にしているが、もし今後の演技構成に組み込んでくることがあれば、それはしっかりGOEを取れるものにしているということだ。そうなれば、紀平は追随してくるロシア勢のさらに一歩先を行くことになる。(文・折山淑美)