そういう時こそ政府の出番ではないだろうか。例えば、グリコが液体ミルク事業の新会社を作って、政府の子育て支援ファンドが、プロジェクトに出資するというのはどうだろうか。普通のファンドのように高いリターンは求めず、大量生産と海外輸出で単価を下げ、国内の子育て層が安く液体ミルクを買えるようにする。民間が二の足を踏む事業で、しかも、成功すれば、ビジネスとしての成果以上に社会政策的な目的も達成できるということであれば、政府が入る大義はあるのではないだろうか。もちろん、無理して官民ファンドでやらなくても、補助金だけでできるかもしれない。
今、政府が運営する官民ファンドはほぼすべてが失敗ファンドだ。それでも経済産業省をはじめとした各省庁はどうしても官民ファンドをやめようとしない。
そうであれば、失敗ファンドの代表格である経産省傘下のクールジャパン機構などが、新規投資を止めて、子育て支援ファンドに衣替えするというのもあるのではないか。
■災害対策用の備蓄を義務付けなどできることは何でもする
さらに、自治体は必ず災害時用に乳児用液体ミルクを備蓄するよう国が義務付けるという方策もある。初期需要はかなり大きなものになり、さらに保存期限ごとに入れ替えも必要だから、定期的、安定的な需要にもなる。それにより、販売開始と同時にかなり大きな需要が創造され、その結果、販売価格を下げることができるはずだ。
これまで、政府は、女性活躍、待機児童ゼロ、希望出生率1.8を目指すなどとスローガンだけは立派なものを掲げてきたが、国民から政策への要望があっても、その声が小さければ、とりあえず無視。少し声が大きくなり始めるとアリバイ作りで時間を稼ぎ、世論が注目したり、批判が高まったりすると、初めて重い腰を上げるという姿勢を続けてきた。乳児用液体ミルクの解禁も10年近くの要望を放置し、震災で国民の関心が高まってようやく対応したという意味で、その典型と言えるケースだ。本来は、とっくの昔から販売が始まっていなければならなかった。
このような政府のアリバイ作りと受け身の姿勢が日本の出生率低下の一つの原因になったのではないだろうか。
政府自身が自分の頭で考え、できることがあれば、国民から言われなくても何でも率先して実行する。そういう政府になれば、「女性活躍」も「子育て支援」も絵に描いた餅ではなくなり、出生率も上昇という具体的な成果が上がるのではないかと思う。
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