復活を目指すベテランの鳥谷敬 (c)朝日新聞社
復活を目指すベテランの鳥谷敬 (c)朝日新聞社
ドラフト3位のルーキー・木浪聖也 (c)朝日新聞社
ドラフト3位のルーキー・木浪聖也 (c)朝日新聞社

 阪神・宜野座キャンプで評価急上昇のルーキーがいる。ドラフト3位の木浪聖也だ。守備は強肩と安定した送球で二塁、遊撃、三塁をこなせる。持ち味はパンチ力とミート力を兼ね備えた打撃だ。

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 7日の紅白戦では新人では12球団最速弾の決勝3ラン。10日のシート打撃も2安打と気を吐いた。遊撃は復活を目指すベテランの鳥谷敬、攻守で中心を担う素材の北條史也、俊足の植田海と定位置争いの最激戦区だが、矢野燿大・新監督は「木浪なんかは面白い。声が出せるのもそう。競争に入ってくる要素を持ち合わせている」と評価した上で、「レギュラー、あるんじゃない。可能性は十分」と明言した。

 昨年は17年ぶりの最下位に低迷。要因は若手野手の伸び悩みだ。目立つのは福留孝介、糸井嘉男とベテランばかり。北條、高山俊、中谷将大と期待の若手が1年間通じて試合に出られなかった。矢野新監督が就任し、チームも刷新された。新風を吹き込んでいるのが木浪だ。

 おとなしい選手が多い中、端正な顔立ちに似合わず強気な発言でハートは熱い。入団会見では「誰にも負けたくない。守備には自信があるし、打つ方でも広角に打てる。阪神は今年最下位だったけど、そこは考えてない。逆に僕が出て変えてやろうと思ってる」とチームの変革を力強く宣言した。

 日の当たる道を歩んできた野球人生ではない。だからこそ、ハングリー精神が強い。同学年の94年は北條、藤浪晋太郎、大山悠輔とそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

 特に「甲子園のスター」だった北條は光星学院で、青森山田の木浪にとって県内で高い壁として立ちはだかり続けた。甲子園出場はなく、亜大でも目立った存在ではなかった。高校、大学通じて公式戦で本塁打ゼロ。打撃が課題だったが、ホンダ入社後に西郷泰之ヘッドコーチの指導でフォーム改造に取り組み長打力がアップ。公式戦通算20本塁打以上を放つ強打者に変貌した。「(北條に)遅れを取っているけど阪神に入って追い抜けたら」と秘めた思いを口にしていた。

 二塁は昨季チームで唯一の全試合出場を果たした主将の糸原健斗、三塁は4番候補の大山がほぼ当確だろう。木浪が定位置を狙うのは遊撃になる。実戦でアピールし続ければ、鳥谷や北條を押しのけて開幕スタメンで出場する可能性も出てくる。優勝争いに食い込むためには、新戦力の台頭がカギを握る。チームを変革できるか。木浪の今後の活躍に要注目だ。(春日哲也)