今回、芥川賞候補者としてもっとも注目されたのが、古市憲寿氏(東京大)だった。情報番組の発言でよく「炎上」しており、最近では、メディアアーティスト・落合陽一氏との対談で終末期医療のあり方の発言で物議を醸した。古市氏は受賞できなかったことを知るや、ツイッターでこうつぶやいている。

「がーーーーーん」(@poe1985 1月16日)

 朝日新聞出版『大学ランキング 2019』では、芥川賞、直木賞を受賞した作家、そして、おもな文学賞を受賞した作家の出身校ランキングを掲載している。

 芥川賞、直木賞ともに、トップは早稲田大である。その要因の一つとして、大学で小説の書き方を教える講義があり、次の世代に引き継がれていったことがあげられよう。

 直木賞作家の朝井リョウ氏(2012年『何者』で受賞、以下、カッコ内は各賞受賞年と作品)は、早稲田大を受験した理由についてこう語っている。

「進学先を決めるときに、先生が早稲田大学で教えていることを知り、堀江先生の授業を受けたいと思って志望したんです」(日本私立大学連盟『大学時報』13年7月号)

 堀江先生とは、芥川賞作家の堀江敏幸氏(00年『の敷石』)のことである。

 朝井氏は早稲田大入学後、堀江氏のゼミ生となって小説の書き方を学んだ。その堀江氏は、学生時代、早稲田大で文学を講じていた故・平岡篤頼氏のもとで学んでいる。平岡氏の教え子には芥川賞作家の小川洋子氏(1990年『妊娠カレンダー』)、直木賞作家の角田光代氏(04年『対岸の彼女』)、重松清氏(00年『ビタミンF』)がいる。

 芥川賞の2位は東京大。最近では小野正嗣氏(14年『九年前の祈り』)、松浦寿輝氏(00年『花腐し』)がいる。直木賞では3位だ。東京大からは文豪、大御所といわれる作家がたくさん輩出した。同大出身の比較文学者、小谷野敦氏はこう記している。

「私が高校生で『文学』に目覚めた頃、日本近代の第一線の文学者が、中退を含めておおむね東大出身であることに驚いたものである。鴎外、漱石、志賀、谷崎、芥川、太宰、川端、三島、吉行、丸谷、大江、古井までそうで、戯作的とされる硯友社の尾崎紅葉ですらそうなのだ」(『大学ランキング 2012』から)

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