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さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第66回はネパールのトリブバン国際空港から。
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途上国と経済力がある国の境界──。そのひとつが、空港行きバスだと思っている。
途上国の人々にとって、飛行機は特別な乗り物である。運賃が高く映るだけではない。外国に出かけるレベルの人がかなり少ないのだ。そういった国には、空港行きバスはない。飛行機に乗るような人はタクシーの乗るのがあたり前という認識がある。仮に空港行きバスを運行させても赤字になることがわかっているのだろう。
しかし経済成長路線に乗ってくると、中間層が生まれてくる。彼らはもともとの富裕層と違うから、飛行機はLCC、空港まではバスという発想に傾いていく。その機運のなかで、空港バスの運行がはじまるのだ。
さまざまな国の空港を使っていると、そのあたりがよくわかる。
ネパールのカトマンズにあるトリブバン国際空港。何回か利用しているが、いまだ空港のターミナルまで行くバスはない。
この空港の場合は観光国という理由も加わってくる。ネパールはヒマラヤ山麓を歩くトレッキングが人気で、その多くがパッケージツアーの形をとっている。山岳ガイドやポーターを雇うという事情があるからだろう。ツアー客は旅行会社が手配した専用車を利用する。バス需要が生まれないのだ。
しかし僕は、空港まではバスで行くという貧乏性が身についてしまっている。今回もカトマンズで泊まった宿からバスターミナルに向かった。