そして、キャプテンのリーチは真のワールドクラス。キャプテンとしても身をもって示すリーダーの典型例だ。出身こそニュージーランドだが、高校時代に来日して以来、進化の歴史は日本で刻んでいる日本育ちのラグビー選手。2011年のワールドカップをカナダ代表と引き分けて終えた直後のミックスゾーンで2015年への意欲とともに「2019年も出たい」と願った大会をいよいよ来年迎えることになる。

 最後に、個々の選手の話題からは離れるが、日本代表としてプレーしている外国出身選手たちにもぜひ注目してもらいたい。オリンピックで行われるセブンズ(7人制ラグビー)とその予選を除き、ラグビーでは代表選手の選手資格に国籍は求めない。すでにどこかの国の代表に選ばれたことがなければ、祖父母までの出生国・地域か、3年以上連続して居住した国・地域の代表になる資格がある。

 彼らは母国とは大きく異なるラグビーのスタイルや環境、文化、生活習慣を受け入れ、来日当初は全くの異国だったろう日本に3年以上も根を張った上で代表に選ばれている。そして、一度サクラのジャージーを着れば、日本のために文字通り、身体を張ってプレーしているのは見ての通りだ。

 折しも、実質的な移民の受け入れと言われる入管法の改正案が話題となり、日本で暮らす外国人の数も250万人を超えて、さらに毎年高い増加率で増えている。日本社会が直面する課題である、国籍や民族、宗教などが異なる人々が対等な立場で共に生きていく「多文化共生」が、ラグビー日本代表にはすでに長く根付いているのだ。

 外国出身選手が代表にいるのは、決して日本だけの現象ではない。サッカーにおける国際サッカー連盟(FIFA)にあたるラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」の副会長で元アルゼンチン代表キャプテンのアグスティン・ピチョット氏は11月20日に日本を含む世界トップ11チームの国外・域外出身選手の割合のリストをツイート。これによると、国外・域外出身選手がいないのは南アフリカとアルゼンチンだけで、半数以上の6チームが25%を超えていた。こうした状況をまるで揶揄するようなピチョット氏のツイートに、世界のラグビーファンは猛反発。「恥を知れ」「副会長職を辞任すべき」などという厳しいコメントを含む多数の反応が寄せられる騒ぎになった。

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来年のワールドカップはダイバーシティーを実感する機会に