阪神・安藤統男元監督 (c)朝日新聞社
阪神・安藤統男元監督 (c)朝日新聞社

 プロ野球はストーブリーグに突入した。FA移籍も気になるところだが、シーズンオフとなり、プロ野球がない日々に寂しい思いをしている方も少なくないだろう。そこで、今回は「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、突然のハプニングが巻き起こした珍事件を振り返ってもらった。

*  *  *

 突然の停電ハプニングが怒涛の大逆転劇を呼んだのが、1982年7月8日の広島vs阪神(岡山)。

 この日阪神はエース・小林繁がまさかの3回5失点KO。5回を終わって0対5と一方的な展開になった。

 6回に代打・永尾泰憲の2点タイムリー三塁打などで4点を返し、1点差に詰め寄ったのもつかの間、その裏、2点を奪われ、4対7と再びリードを広げられた。

 思いもよらぬハプニングが起きたのは7回。先頭の佐野仙好がフルカウントになり、古沢憲司が6球目のモーションに入ろうとしたとき、突然6基の照明灯が消え、グラウンドが真っ暗になってしまったのだ。

 降りしきる雨も影響して、暗がりの中で選手の立っている姿がかすかに見分けられる程度。これではプレーできない。

 水銀灯は一度消えると明るさを取り戻すまでに約20分かかる。両軍ナインは全員ベンチに引き揚げ、待機する羽目になった。

 そして、この18分間の停電中断が阪神に“光明”をもたらす。

 試合再開後、佐野が2球連続ファウルで粘り、四球を選んで出塁。掛布雅之も中前安打で続く。1死後、藤田平が四球を選んで満塁とし、次打者・ジョンソンの当たりはショート後方にポテンと落ちるラッキーな2点タイムリーに。

 さらに、若菜嘉晴の中前同点タイムリーのあと、代打・加藤博一四球で再び満塁とし、真弓明信の遊ゴロ併殺崩れの間に勝ち越し。なおもアレン、佐野の連続四球による押し出しで1点を加え、9対7で逃げ切った。

 停電のち晴れとも言うべき鮮やかな逆転勝利に、安藤統男監督は「(7回は)ベンチでは『3点差でもイケる』と声が出ていた。でも、5点を取るとは……」と驚きを隠せない様子だった。

 その後、停電の原因は、市内の電柱にアオダイショウが登ったためと判明。御利益にあずかる形となった阪神にとっては、まさに“アオダイショウ様様”だった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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判定が二転三転する「異常事態」