優作さんは病の激しい痛みに耐えながら、写経をしたり仏像を彫ったりしていたという。その裏側には「心の師」と仰いだ人物の存在があった。美智子さんはこの人物にも取材を申し込み、FAXで返答を受けている。

<優作さんとは非常に短い期間でしたが、浮世の人間的な交流でなしに、禅、道の修行者として、最初から一貫して、一期一会で終って居ります!>(原文ママ)

<浮世で、病院に入院されている時、身体が具合悪く、非常に苦しまれている時、連絡があって、病院に伺った事がありますが、私が行くと不思議と身体の状態がよくなって、平静になられたのを記憶して居りますが、くわしい事は当時の病院の院長が御存知と思います!>

 病が進行し、精神論に頼るしかなかったのかもしれない。

「周りが言っても聞かなかったんだと思いますよ。(精神論に頼るのを)おかしいと思う人もいれば、『病は気から』とあるように、それが必ずしもダメだというわけではない。当時優作の周りにいた人の中で、拠り所になったのがその人たちだったのでしょう」(美智子さん)

■「中央林間のパチンコは楽しい」 仲間に見せた一面

 11月のある夜。年に1度だけささやかに催される「優作さんを偲ぶ会」が、今年も開かれていた。場所は東京・池袋の居酒屋。前出の松田美智子さんと、優作さんが立ち上げた演劇集団「F企画」の仲間たちが主催だ。一献傾けながら話は弾むが、年齢を重ねたメンバーたちの興味関心は健康ネタに移っていく……。すると、美智子さんが、

「黙ってると皆、健康の話ばっかりになっちゃうから、質問したほうがいいわよ」

 参加した記者にそう投げかける。場が一気になごむ。

 今年の会には、優作さんを「兄貴」と呼んでいたF企画の野瀬哲男さんや、同じく劇団で時を過ごした重松収さん、亀田順子さんらが集まった。毎年、優作さんの命日が近づくと数人で集まっているという。代表作の一つであるテレビドラマ「探偵物語」でも共演するなど、優作さんと出会ってから、40年以上の月日が流れていた。

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