メルボルン・ビクトリーで新たなキャリアに挑む本田(写真:getty Images)
メルボルン・ビクトリーで新たなキャリアに挑む本田(写真:getty Images)
豪州プロサッカー選手協会(PFA)のサイモン・コロシモ氏(写真提供:元川悦子)
豪州プロサッカー選手協会(PFA)のサイモン・コロシモ氏(写真提供:元川悦子)

 メルボルン・ビクトリー(メルボルンV)で新たなキャリアの一歩を踏み出した本田圭佑が、オーストラリアAリーグ初のクラブと豪州サッカー協会(FFA)の共同出資マーキープレーヤーだということは、前回の原稿(11月3日配信『本田圭佑が移籍した豪州リーグ…カズの「代理人」が語る大物移籍の背景』)に書いた。150万豪ドル(約2億円)という推定年俸がどれだけ高額かというのは、他のAリーグプレーヤーの年俸と比べれば一目瞭然だ。

「Aリーグの場合、最低年俸は7万豪ドル(約560万円)と設定されています。平均年俸は15万4000豪ドル(約1232万円)。もちろん豪州代表クラスはもっと高い年俸を手にしているでしょうが、ホンダの金額は平均の約10倍に当たります。過去にもカズ(三浦知良=横浜FC)やオノ(小野伸二=札幌)、アレッサンドロ・デルピエロ(元ユベントスなど)、ダビド・ビジャ(元バルセロナなど、2014年にはメルボルン・シティで4試合出場)のような選手はいましたが、本田はその中でも相当高い位置づけ。それは彼が日本代表として豪州相手に目覚ましい活躍を見せてきたインパクトの大きさも影響していると思います」

 こう語るのは、プロフェッショナル・フットボーラーズ・オーストラリア(豪州プロサッカー選手協会=PFA)のサイモン・コロシモ氏。かつて、マンチェスター・シティでプレーし、2000年シドニー五輪や2005年コンフェデレーションズカップ(ドイツ)にも参戦した経験がある元豪州代表DFだ。

 それだけの投資をして、本田を獲得した豪州サッカー界の狙いはいくつかある。1つはAリーグをJリーグの成功モデルに近づけること。93年の発足時はわずか10チームしかなかったJリーグが25年経った今はJ1・18チーム、J2・22チーム、J3・14チーム(U-23チーム除く)の54チームに増えている。このようなピラミッドを豪州に作ることが当面の目標だとコロシモ氏は語る。

「Jリーグはクラブ数が増えただけでなく、財政面も堅調。DAZNからの放映マネーも入ったと聞きますし、アンドレス・イニエスタ(神戸)、フェルナンド・トーレス(鳥栖)ら世界的タレントも加わっている。そういうリーグにしたいと我々は願っています。豪州のスポーツ人気度はラグビー、オージーフットボール、クリケットの順で、その下がサッカー。地位が極めて低いのが問題点。それでも1年後の2019年秋には2チーム増えて12チーム編成になる予定です。それを数年後には14、16と増やしていければ理想的だと思います。Aリーグの下は目下、セミプロのナショナル・プレミアリーグが36チーム、アマチュアのステイト・リーグが50チーム以上あります。そういうチームの財政面を健全化させるためにも、もっとAリーグへの注目度を高める必要がある。ホンダがいれば、日本企業もスポンサーになってくれる可能性は高いでしょう」

 今のところテレビ放映権が日本で売れておらず、中継なしの状況が続いているのは1つの誤算かもしれないが、本田がインパクトを残し続ければ、どこかが手を挙げる可能性は少なくない。

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本田がもたらすアジア活性化の可能性