転学も増えている。第1志望の大学に入れなかった。第2、第3志望の大学に入ったものの、いわゆる仮面浪人して再受験するケースだ。昨今、現役志向が強まるなか、不本意で入学したため、気持ちをなかなか切り替えることができず、大学を去ってしまう学生もいる。
一方、学校生活不適応が減少したのは、多くの大学で学生相談支援センターを充実させたことによるものだろう。小規模の大学のなかでは、3回以上欠席が続くと担当教員または学生課職員がその学生に連絡して様子を聞くところがある。このまま休みが続いたら、大学をやめてしまうのではないか。大学は退学を防ぐために、学生指導に力を入れるようになった。
ただ、学業不振が増加していることについて、大学は忸怩(じくじ)たる思いをしていることだろう。大学は学習支援の体制を整備しつつある。最近では多くの大学で、高校までの数学、英語をもう一度やり直すといった補習授業を採り入れるようになった。
最近の傾向として、大学は退学者を出さないようにしっかり教育をしよう、生活支援や学習支援をしよう、という風潮が見られる。それは大学教育の質の向上につながることになり、歓迎すべき話だ。
大学に来ない学生は放っておけばいい、退学したければどうぞという昭和の考え方では、大学の社会的責任が問われてしまう。退学者が多い大学というレッテルを貼られては、学生募集に支障をきたし、高校から信頼されなくなる。授業料収入の減少という現実的な問題もある。それゆえ、退学させないため、学生のモチベーションを高めようと、各大学でさまざまな工夫を凝らしている。このあたりから、大学教育の本気度を見ることができる。
それでも、大学をやめて、自分の好きな道に進みたいと思う人たちがいる。このなかには夢を叶えてその世界で功成り名を遂げた人もいる。大学を退学した著名人を、並べてみた。
■早稲田大
石田純一、上田晋也、小室哲哉、堺雅人、サンプラザ中野くん、タモリ、長塚京三、ラサール石井、広末涼子、福原愛、室井滋
■慶應義塾大
石原裕次郎、千住明、近田春夫、櫻井よしこ、竹内まりや
■法政大
糸井重里、甲本ヒロト、村上弘明
■明治大
北野武、水道橋博士、西田敏行、山下達郎、阿木燿子
<北野、阿木は明治大から「特別卒業認定証」を授与されている>
■中央大
秋元康、渥美清、加瀬亮、上川隆也、岸谷五朗、野島伸司、山下真司
■立教大
有田哲平
■青山学院大
賀来賢人、高橋克典、槇原敬之
■関西大学
桂文枝
■関西学院大
小池百合子、豊川悦司
■同志社大
百田尚樹
■東京大
野田秀樹、堀江貴文
(男女、50音順)
(文/小林哲夫・教育ジャーナリスト)
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