森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
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夜泣きを解決するためにはねんねトレーニングが有効(※写真はイメージです)
夜泣きを解決するためにはねんねトレーニングが有効(※写真はイメージです)

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、赤ちゃんの「ねんねトレーニング」について「医見」します。

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 私は普段、夜泣きで困っているママパパには「ねんねトレーニング」というトレーニングをおすすめしています。これは、赤ちゃんの夜泣きにすぐに反応せずそっとしておくことで、夜泣きを解決するというものです。しかし、この「泣いていてもそっとしておく」ことが、赤ちゃんの発達、特に愛着形成に悪影響があるのではないかということは、よく議論の的になります。今日はこのテーマについて、研究を紹介しながら解説したいと思います。

 子どもの適切な愛着形成を促すことは、特に1歳半までの育児で大切です。愛着とは、『人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形造っている』ものです(※1)。安定した愛着を形成することが、大人になってからの良い対人関係を築くために重要と考えられています。不安定な愛着スタイルは回避型と抵抗型などに分けられますが、これらの愛着スタイルを持つ人は、相手を信頼しにくく、上手に助けを求められなかったり、相手をコントロールしようとしたりする傾向があります。

 生後6カ月から生後1歳半は、この愛着形成にとって一番重要な時期です。この時期に、特定の養育者が子どものニーズに敏感に応え、スキンシップを十分とることが大切です。特定の養育者というのは母親である場合が多いと思いますが、母親でないといけないわけではありません。特定の誰かが、子どもの要求にすぐに反応し、たくさん抱っこしてあげるのがポイントです。

 しかし、「ねんねトレーニング」をする場合、夜中に赤ちゃんが泣いても、すぐに抱っこするのではなく、ある程度「放って置く」ことになります。しかも、ねんねトレーニングが必要になるのは、6カ月前後から1歳頃までのお子さんが一番多く、ちょうど愛着形成の臨界期と重なってしまいます。夜泣きを解決するためにはねんねトレーニングが有効ですが、ねんねトレーニングを行うことは、安定した愛着を形成する方法と逆行してしまうのです。

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愛着形成に悪い影響なし