涙ぐましい不倫の償いの効果は?(※写真はイメージ)
涙ぐましい不倫の償いの効果は?(※写真はイメージ)
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 京都大学の本庶佑特別教授(76)がノーベル医学生理学賞を受賞した。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回はいま注目を集める本庶教授の言葉から、夫婦関係の“処方箋”を紹介する。

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 ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑先生のインタビューを見ていたら、ご夫婦の関係にも重要なことをおっしゃっていました。

「何を知りたいか」が大事であって「何ができるか」に逃げてはいけない、という部分です。逃げるという言葉はとても厳しい言い方だな、とは思いましたが、カウンセリングでも全く同じです。

 私は、クライアントさんに「どうなりたいですか?」とお聞きすることが多いのですが、「どうなりたいのか」というゴールと、「何ができるか」という現状での見通しが混線してしまう方が多いのです。

 自分の不倫が発覚して、妻の気持ちが乱高下し、ついには起き上がったり、子どもの面倒を見ることも困難なほど憔悴してしまったということで、ご夫婦でおいでになった良蔵さん(仮名、30代半ば・会社員)は、

「どうなりたいですか?」

という私の問いに、こうおっしゃいます。

「妻を楽にしてあげたいです。少しでも役に立てばと思って、会社は定時に帰るようにしましたし、GPSもセットしていつでも使が私の居場所を分かるようにしています。家事・育児もできる限りやっていて、他にもできることは何でもするつもりなんですが、他に何をすればいいのかわからなくて……」

 事実、多忙な仕事をされている良蔵さんにとってそれは大変なことで、涙ぐましい努力だろうと思われます。しかし、私の質問には答えてくださっていません。そして、「どうなりたいか」に答えるかわりに、「妻をどう変えたいか」、自分が「何をしているか」をお答えになり、自分に「何ができるのか」を質問されています。この思考構造に陥ると状況を変えるのがなかなか困難です。

 本庶先生の言葉によれば、何をしたいか、ではなく、何ができるかに逃げているということになるかもしれません。

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「夫にもう少し家のことを考えてほしい」切実な願い