──具体的にはどのような議論が行われているのでしょうか。
2011年の東日本大震災後には、被災地での統一地方選が延期されましたが、これは法律の改正で対応できました。しかし、大規模災害が発生したときに国政選挙が重なっていると、現行憲法では選挙の延期はできません。南海トラフや首都直下地震がおきれば、たくさんの被災者が出て、さらには候補者自身が亡くなるような事態もありえます。そのような状況で、有権者に投票所に足を運んでもらうことは現実的に困難ではないのか。一方で、憲法上、参議院には衆院議員がいなくても国会を開くことできる「緊急集会」があります。ですので、党内では衆院議員の任期延長の特例は必要ないのでは、との意見もあり、結論は出ていません。自民党案では緊急事態の際に内閣が政令によって権限を集中できるようにする条項が入っていますが、これには慎重論が根強いです。
参院の抜本改革については、公明党では比例区と各選挙区を廃止して、全国を11のブロックに分ける大選挙区制を提示していますので、基本的な考え方が違う。教育の充実についても、憲法を変えなくても、給付型奨学金の対象者拡充や私立学校の無償化など、予算と現行制度の運用で実現できることなので、本当に改正が必要なのかという意見があります。
──安倍首相は、自衛隊を憲法に明記することを訴えています。
公明党は自衛隊を合憲と考えていますが、2015年の安保法制をめぐっては国連憲章で認められている集団的自衛権について、憲法9条の解釈でどこまで許されるのかという議論をしました。そこで、米軍が日本を守るために活動しているとき、たとえば北朝鮮から攻撃された場合等に限り、あくまでも自国防衛のためだけに集団的自衛権を行使できるようにしました。
その状況で、自衛隊の存在を明記した「9条の2」が憲法で規定されたとき、私たちが今まで国会や政府与党内でやってきた議論がどのような影響を受けるのか。慎重に考えざるをえません。
たとえば、国民投票で否決された場合にどうなるのか。法律論としては、否決されても自衛隊の存在が違憲になるわけではありません。ただ、国民の意志で憲法に自衛隊の存在を書き込むことが否決されるわけですから、政治的には無視できない影響が出ます。そこまでしっかり考えた上で、議論しなければなりません。