自民党総裁3選を果たした安倍晋三首相が、憲法改正への動きを早めている。次の臨時国会で自民党としての改憲案を提出するために、「公明党と調整を行いたい」との意向も示している。
ところが、公明党の山口那津男代表は「あくまで国会の憲法審査会の場で協議をしていくことが原則だ」として、自民党との事前調整を行わないことを明言している。
なぜ、公明党は与党間調整をしないのか。その背景には、改憲国民投票が否決された場合、政治的な影響が大きいことがある。また、公明党の支持母体である創価学会の池田大作名誉会長は、過去にインタビューなどで憲法9条の改正に反対している。公明党は、安倍首相の改憲に対する前のめりな姿勢をどのように考えているのか。同党憲法調査会事務局長である遠山清彦衆院議員に聞いた。
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──公明党が主張している「加憲」とは、どのような考え方でしょうか。
我々は今の日本国憲法を高く評価しています。「国民主権」「恒久平和主義」「基本的人権の尊重」の3つは人類にとって普遍的な原則で、それがきちんと書き込まれています。
世論調査でも現行憲法を評価する声は多く、公明党としては「憲法は変える必要がない」と考えています。ここが、憲法改正を党是としている自民党と根本的に違うところです。
一方、日本国憲法の施行から71年が経過しました。日本の内外情勢が大きく変化し、最近ではLGBTの方々のような、新しい人権の問題もクローズアップされています。よって、内外の社会情勢や思想の潮流の変化にあわせて、今の憲法に足らざるところがあれば、それを補う条項を追加していく。たとえば、公明党では「環境権」の概念を憲法に追加することを提案したことがある。そういった意味での憲法改正、つまり「加憲」はやぶさかではないというのが基本的な立場です。
──安倍首相は、「加憲」の形での憲法改正に意欲を見せています。
最近は改憲派の集会でも、櫻井よしこさんのような方も、普通に「加憲」という言葉を使うようになりました。これには感慨深い思いがあります。
現在の自民党案では、「自衛隊の明記」「緊急事態条項」「参院での合区解消」「教育の充実」の4つが具体的に出ています。これを受け、公明党では今年7月に党内での議論を始めることを決めました。そのほかに、野党の一部が主張している「地方自治の強化」も議論の対象になりえます。ただ、現在は党としての意見を取りまとめる段階には至っていません。意図的にゆっくりやっているわけではなく、憲法改正の中身については、慎重かつ広範に研究するのが基本方針です。