そうですね。ところが、見通しが甘かった。キャメロン氏としては、EU残留は首都ロンドンのエリートたちだけではなく、野党の労働党も支持していたので、負けるとは思っていなかったのでしょう。しかし、国民投票ではロンドンへの富の一極集中に対する地方の根強い反発がEU離脱支持に動き、結果として残留が48.1%、離脱が51.9%でEU離脱が決定してしまいました。

 本来、EUを離脱するかどうかと首都と地方の格差はそこまで関係のないものです。それについてカウリングさんは、今回の国民投票の意義について、英国民は「痛みの伴わない、キャメロン政権に一撃をくらわす絶好の機会ととらえた」と表現していました。

──イタリアのレンツィ内閣も、2016年に上院改革をテーマにした憲法改正の国民投票に敗れ、退陣しました。

 レンツィ氏の上院改革案は、上院の権限を弱めるものであるにもかかわらず上院議員の賛同を得たもので、内容も優れたものでした。しかし、これもレンツィ政権への信任投票のような形になってしまいました。

──日本でも国民投票が安倍首相への信任投票になる可能性があるのではないでしょうか。

 安倍首相が与党第一党の総裁として憲法改正を語ることは自由です。ただ、英国やイタリアの例をふまえると、国民が本当に望む憲法改正案を国会が発議できるかについて、深く考えなければなりません。発議までの運び方を間違えて国民投票が時の政権への信任投票になってしまっては、「憲法改正の是非を問う」という本来の目的が失われかねません。

 よくマスメディアは「安倍首相悲願の憲法改正」という書き方をしますよね。憲法改正が安倍首相個人にパーソナライズされてしまうと、国民投票が別の政治的意義を持つ事になってしまい、論点がずれることになるのではと懸念しています。

──野党は、安倍首相が主導して憲法改正案が強行採決で発議されることを警戒しています。

 与野党全会派が一致して憲法改正の発議することは難しいかもしれません。しかし、少なくとも与党と一部の改憲推進派だけで数で押し切るものではないという考え方が、公明党内では非常に強いです。

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