1980年から南海電鉄上町線、阪堺線の運営は阪堺電気軌道に移管され、現在の上町線はLRTも走るモダントラムラインへと変身している。画面右端に位置する近鉄阿部野橋ターミナルの跡地には、2014年に竣工した地上300m60階建ての日本一超高層ビル「あべのハルカス」が佇立しており、この威容はホテル、博物館のあるオフィスビルとして新しいランドマークになっている。
最後のカットが阿倍野交差点で上町線と交差接続する平野線阿倍野停留所に停車する天王寺駅前行きの路面電車。この停留所には木造の駅舎と屋根付きのプラットホームがあり、専用軌道と共に雰囲気が異なっていた。写真のモ101型は戦後も10両が残存した三扉仕様の木造低床式ボギー車。1924年梅鉢鉄工所が製造した全長14.286、定員82名(座席定員44名)、ブリル77E-1台車を履いた古豪だった。
屋根上の水雷型通風器や昔ながらの救助網が醸し出す風貌は、大向うから「日本一」と掛け声がかかるような威風堂々とした名優だった。
■撮影:1964年8月4日
※AERAオンライン限定記事
諸河久
諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍『路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情』(天夢人)が絶賛発売中。
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諸河久
諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍『路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情』(天夢人)が絶賛発売中。