国会前で、入管難民法改正案の衆院通過に抗議する人たち=2023年5月9日(写真/朝日新聞社)
国会前で、入管難民法改正案の衆院通過に抗議する人たち=2023年5月9日(写真/朝日新聞社)

 入管法改正案の廃案を求める声が大きくなっている。

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 5月7日、雨降る東京都杉並区には3500人あまりが、12日の国会前には4000人を超える人々が集まり、反対の声を上げた。衆院本会議で賛成多数によって可決され、参院で審議が進む改正案。何が問題とされているのか。

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 焦点のひとつが、難民申請者の「強制送還」である。現在の法律では、申請中は強制送還されることはないが、改正案では、3回目以降の申請中であっても強制送還ができるようになる。

 日本で「非正規滞在者」(現在は「不法滞在者」という言葉は使わない方向にある)にあたる人は、ここ数年7万人前後で推移している。何らかの理由で日本での在留資格を失い「退去強制令書」が発布されると、彼らは日本を出るか、入管施設に収容されるかを選ばなくてはならない。もちろん多くの人は、出国を選ぶ。飛行機のチケットを自ら買って、日本を出ていくことになる。私たちが海外に滞在しているときに同じようなことが起こったら、間違いなくそうするだろう。外国の収容所に入れられてまで、その国にとどまる理由はなかなか思い浮かばない。

 実際、退去を求められた人のうち、95%以上が日本を後にしている。

■帰りたくても帰れない

 では残りの5%、つまり「収容されても、日本に残る」と決めた人とはどのような人なのだろうか。難民として認められるべき人も含め、事情があって帰れない人は「送還忌避(きひ)者」と呼ばれている。忌避というのは「嫌がって、避ける」の意味だが、現状を見ると「そうせざるを得ない」というケースが多い。

 理由は様々だが、まず挙げられるのが「自国に戻ると命の危険がある人」。戦争や迫害の恐れなどによって祖国へ帰れない人は、一定数いる。「難民条約加盟国である日本に、助けを求めてやってきた人」といってもいいだろう。

 しかし、法務省発表資料から難民支援協会が作成したデータによると、日本における2021年の難民認定率は、0.7%(74人)と、他の加盟国の認定率と比べて著しく低い。同年、イギリスは63.4%(13,703人)、カナダは62.1%(33,801人)だ。この数字の違いを日本に来る前に知っていたら……と後悔する人もいるだろう。

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自分は日本で生まれ、日本で学んだのに、なぜ