参議院で審議中の入管法改正案は法案として提案できるレベルなのか? 法案の根拠の数字に疑惑や隠ぺい続々

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2023/05/20 08:00

国会前で、入管難民法改正案の衆院通過に抗議する人たち=2023年5月9日(写真/朝日新聞社)
国会前で、入管難民法改正案の衆院通過に抗議する人たち=2023年5月9日(写真/朝日新聞社)

 入管法改正案の廃案を求める声が大きくなっている。

 5月7日、雨降る東京都杉並区には3500人あまりが、12日の国会前には4000人を超える人々が集まり、反対の声を上げた。衆院本会議で賛成多数によって可決され、参院で審議が進む改正案。何が問題とされているのか。

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*  *  *

 焦点のひとつが、難民申請者の「強制送還」である。現在の法律では、申請中は強制送還されることはないが、改正案では、3回目以降の申請中であっても強制送還ができるようになる。

 日本で「非正規滞在者」(現在は「不法滞在者」という言葉は使わない方向にある)にあたる人は、ここ数年7万人前後で推移している。何らかの理由で日本での在留資格を失い「退去強制令書」が発布されると、彼らは日本を出るか、入管施設に収容されるかを選ばなくてはならない。もちろん多くの人は、出国を選ぶ。飛行機のチケットを自ら買って、日本を出ていくことになる。私たちが海外に滞在しているときに同じようなことが起こったら、間違いなくそうするだろう。外国の収容所に入れられてまで、その国にとどまる理由はなかなか思い浮かばない。

 実際、退去を求められた人のうち、95%以上が日本を後にしている。

■帰りたくても帰れない

 では残りの5%、つまり「収容されても、日本に残る」と決めた人とはどのような人なのだろうか。難民として認められるべき人も含め、事情があって帰れない人は「送還忌避(きひ)者」と呼ばれている。忌避というのは「嫌がって、避ける」の意味だが、現状を見ると「そうせざるを得ない」というケースが多い。

 理由は様々だが、まず挙げられるのが「自国に戻ると命の危険がある人」。戦争や迫害の恐れなどによって祖国へ帰れない人は、一定数いる。「難民条約加盟国である日本に、助けを求めてやってきた人」といってもいいだろう。

 しかし、法務省発表資料から難民支援協会が作成したデータによると、日本における2021年の難民認定率は、0.7%(74人)と、他の加盟国の認定率と比べて著しく低い。同年、イギリスは63.4%(13,703人)、カナダは62.1%(33,801人)だ。この数字の違いを日本に来る前に知っていたら……と後悔する人もいるだろう。

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