詩で時代を記録するドキュメントのような作品になった 文月悠光さんの新詩集『パラレルワールドのようなもの』

2023/01/09 11:00

ふづき・ゆみ/詩人。1991年生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年で発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少の18歳で受賞。そのほかの詩集に『屋根よりも深々と』『わたしたちの猫』(photo 大野洋介)
ふづき・ゆみ/詩人。1991年生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年で発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少の18歳で受賞。そのほかの詩集に『屋根よりも深々と』『わたしたちの猫』(photo 大野洋介)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

『パラレルワールドのようなもの』は、文月悠光さんの著書。6年ぶりとなる文月さんの第4詩集。2016年から22年に書かれた詩から、26篇を収録。「わたしが透明じゃなくなる日」の後半は、第1詩集に収録されている「私は“すべて”を覚えている」へのアンサーでもある。文月さんに、同書にかける思いを聞いた。

【写真】文月悠光さんの著書『パラレルワールドのようなもの』はこちら

*  *  *

 10歳で詩を書き始めたから、もう20年、詩と共に生きている。コロナは文月悠光さん(31)の詩作にも影響を与えた。

「緊急事態宣言が出たり、少し大きな声で話すだけで眉をひそめられるような状態もあり、しばらくコロナ禍に関する詩は書けなかったんです。ただ、日記だけはつけていました。騒動の中で忘れられていく存在や、無視される声をここに書いておくぞ、というような気持ちもあって」

 そんなとき、コロナ禍の現状を反映したような詩を書いてほしいと依頼があった。その言葉に、文月さんは背中を押された気持ちになった。

「今、とても不安だけれども、詩の言葉なら、『いつかまた会おうね』という前向きな内容にできるかなと思いました」

 書いたのは「誰もいない街」。希望の言葉が最後に綴られる。

 薄明のわたしは きみの窓になろう。/きみの独りごとを聴く壁になろう。/きみの背中を抱く椅子になろう。/ドアになろう、きみがここを出るための。/誰もいない街で。/春となって きみを照らそう。/きみの声を遠く運ぶ風になれたなら──。/まぶたは 光をさがすことをやめない。

「パラレルワールドのようなもの」は、五輪開催直後に書かれた詩だ。開催反対の声が高まる中、国際オリンピック委員会の広報部長の発言がニュースになった。

「五輪はパラレルワールドのようなもの。我々から東京で感染を広げることはない」

 文月さんの胸にその言葉は突き刺さった。この詩は、一転、強い言葉が並ぶ。

1 2

あわせて読みたい

  • 天才と言われた詩人・文月悠光 街に出て感じ、考え、書いた一冊

    天才と言われた詩人・文月悠光 街に出て感じ、考え、書いた一冊

    AERA

    4/12

    高松の書店で詩人・管啓次郎さん、文月悠光さんのイベント「声と文学」を開催

    高松の書店で詩人・管啓次郎さん、文月悠光さんのイベント「声と文学」を開催

    BOOKSTAND

    11/15

  • 「金原ひとみの書き手の性に圧倒された『パリの砂漠、東京の蜃気楼』」詩人・文月悠光のおすすめの5冊

    「金原ひとみの書き手の性に圧倒された『パリの砂漠、東京の蜃気楼』」詩人・文月悠光のおすすめの5冊

    AERA

    11/13

    死んでしまう系のぼくらに

    死んでしまう系のぼくらに

    週刊朝日

    9/18

  • 「中原中也賞」詩人が読み解く「モヤモヤ」な気持ちとは?
    筆者の顔写真

    文月悠光

    「中原中也賞」詩人が読み解く「モヤモヤ」な気持ちとは?

    dot.

    10/8

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す