地上から219.5mにあるスカイビュー展望台からの眺め(撮影/西元まり)
地上から219.5mにあるスカイビュー展望台からの眺め(撮影/西元まり)

 銀行を辞めて、この施設を8年前に始めたシャディさんは、

「小さい時森を歩いていて、とても怖かった。でもその怖さはどこから来るんだろうと考えているうちに怖くなくなった。意識を変えると、考え方、生き方も変わるんだ」

 と語る。雑念を払い切れなかった自分には、まだ多くの怖さがあるんだと思った。

 そんな話を隣の野外カフェ「セヴァ・テーブル」で聞きながら、小麦粉、砂糖、肉などを使わない料理を味わう。トマトやズッキーニなど地元でできる野菜を中心に、ハーブやナッツもたっぷり。腸活にもよさそうだ。

 翌朝、6時。エコツーリズム・砂漠サファリを手掛ける「プラチナム・ヘリテージ」の車で王室が管理するドバイ砂漠保護区に入ると、砂漠のパノラマが広がる。ルブアルハリ砂漠は、オマーン、イエメン、サウジアラビアと接する世界最大級の砂漠のひとつ。さっきまで見えていた超高層ビル群が、車で1時間弱走るだけでどこにも見えないなんて、全く驚いてしまう。

■遊牧民に思いをはせ

 入り口でシェーラという布を頭に巻いてくれて、いにしえの遊牧民ベドウィンのようにラクダに乗る。見晴らしがよく、乗り心地もいい。

「サソリはいるんですか?」

「いるけど、昼は出てこないよ。でも、夜になったらね」

 遊牧民はこんな不安も感じながら果てしない砂漠を旅したんだろうな、と思いをはせる。テントで豆、ゴートチーズ、オリーブオイルにコリアンダーやクミン、カルダモンなどのスパイスとごまのペースト「タヒニ」を混ぜた地元の朝ごはん。これがまた、香りがよくておいしい。そしてランドローバーに乗り込み、地平線に向かって風を切って走る。めちゃくちゃ、気持ちいい!

「もしもここで水がなくなったら、さあどうする?」とガイドのサミーさん。こう続ける。

「ガフという名の高い木を見つけるといい。ガフは40~50メートル根を下ろす。そのそばに水はある」

■天国で泳いでいるよう

 砂の波紋が青い空と対比して美しい。世界の果てに来た気分。砂漠にたたずむアラビアオリックスやガゼルなど固有の野生動物も見ることができた。長く幽閉されていた心と体がようやく“解放”された気がした。

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