AERA 2022年11月7日号より
AERA 2022年11月7日号より

「今は身のまわりのことを母親にしてもらっていますが、このまま両親が年をとったら私はどうなるのだろうと。将来のことを考えると、不安で死にたいと思う時があります」

 取材を進めると、ひきこもりの根っこに「親との関係」を抱えている女性が少なくないことがわかった。「毒親」「親ガチャ失敗」──。そう語る当事者の女性は何人もいた。

 首都圏に暮らす女性(20代)もそんな一人。中学生の頃から断続的にひきこもっている。きっかけは、幼少期の親からの精神的虐待にあった。

 小学生の時にいじめに遭い不登校になると、親は登校を強く促し、勉強ができないと責め立てた。中学になると自室にこもるようになった。最近は少しずつ外に出られるようになったが、こう話す。

「親から自由になって、自分の人生を生きたいです」

 生きづらさを抱える人たちに、先の恩田さんはこう声をかける。

「私にとって、自分のタイミングで動きはじめるということはとても重要でした。しんどくて仕方がない時は、まずは休むことに集中してほしいです。周りや社会から追い立てられるような言動やプレッシャーがあるかもしれませんが、しっかりと心や身体を休めながらエネルギーをためて、自分自身が一歩踏み出してみようと思うタイミングを待つことが大切かなと思います」

■親の自己満足の「よかれ」が子どもの生きる力を奪う

 自身も母親との関係でひきこもり経験のある、ひきこもりUX会議共同代表理事の林恭子さん(56)は、生きづらさの背景には「親のエゴ」も大きく影響していると指摘する。

「勉強にしろ、習い事にしろ、しつけにしろ、どの親も恐らく子どものために『よかれ』と思いやっています。しかし、それは、親が自分の価値観を子どもに押しつけているだけかもしれない。子どもにすれば、存在を否定されていると感じるかもしれません」

 同会議が19年に実施した「ひきこもり・生きづらさについての実態調査」では、生きづらさの理由に「母親との関係」と回答した女性は51.8%、「父親との関係」と答えた人も44.9%いて、半数近くが親との関係から生きづらさを感じていると答えた。

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