19歳の頃からひきこもるショウコさん(30代)。ひきこもるようになったのは、生きづらさを感じたから。今も、人と関わって裏切られる怖さがあるという(写真:ショウコさん提供)
19歳の頃からひきこもるショウコさん(30代)。ひきこもるようになったのは、生きづらさを感じたから。今も、人と関わって裏切られる怖さがあるという(写真:ショウコさん提供)

「家事手伝い」や「専業主婦」という言葉で、見えない存在とされてきた「女性のひきこもり」。死にたい、将来が不安……。様々な生きづらさを抱える女性たち。ひきこもる原因の一つに、「親との関係」も見えてきた。親はどうすればいいのか。AERA 2022年11月7日号の記事を紹介する。

【図】女性の生きづらさの理由はこちら

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 今年6月、人口約70万人の東京都江戸川区が独自に行ったひきこもり調査が注目を集めた。

 昨年7月から今年2月にかけ、約18万世帯を対象とした調査で、7919人がひきこもり状態にあると判明した。年齢別では40歳代が最多の1196人、次いで50歳代が1155人、30歳代が968人と働き盛りが多い。ひきこもりの期間は1~3年未満が28.7%と最多で、次いで10年以上が25.7%となっている。そして、男女別では女性が3684人(51.4%)と、男性の3461人(48.3%)より多いことがわかったのだ。

 ひきこもり経験者らでつくる一般社団法人「ひきこもりUX会議」共同代表理事の恩田夏絵さん(36)は、女性のひきこもりは、女性が長年置かれた立場が影響して、より可視化されにくかったのではないかと話す。

「日本では『家事手伝い』や『専業主婦』という言葉で、女性は家にいるものだという社会通念がありました。そのため生きづらさを感じて家にいても、『見えない存在』であり、『ひきこもりではない』とされてきたのだと思います」

 同会議では、ひきこもる女性等の居場所として女性限定の「女子会」を2016年6月から開始し、今年9月までに全国で170回以上開き参加者は延べ4700人以上になった。恩田さんは、「女性には安心して話せる場が少ない」と指摘する。

■ひきこもりの根っこに「毒親」「親ガチャ失敗」

「『見えない存在』として扱われていたこともあり、長らくひきこもり当事者は男性が多いと考えられてきました。当事者会などの集まりでも男性参加者が多くなることがほとんどです。また、DVやセクハラなどの被害を受け、男性に苦手意識を持っている女性も少なくありません。女性が安心して話せる場所が少ないのは、当事者が抱えている苦悩の一つだと思います」

 女性が抱える生きづらさは、様々だ。

 19歳のころから実家にひきこもる、関西地方に住むショウコさん(30代)は将来の不安について話す。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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