吉岡:私は小さい頃から、自分に起こる現実から目をそらしてはいけないって思っていたんです。「今起きていることが最善」というか。そう思うだけで、しんどいこともうれしいことも、同じように受け入れられるようになった。だって「なんでこんなこと起こるんだろう?」みたいなことってたくさん起きるじゃないですか。例えば1年前くらいにインスタを乗っ取られたことがあって。私のアカウントでトルコ人がインスタライブをやっていたんです(笑)。

 今回の舞台に登場するセリフで「予言されたことでプレッシャーになる」っていうのがあるんですけど、自分の幸せを定義づけた瞬間、急にそれがマイナスになってしまう気がして。だからあんまり普段から「こうありたい」とか思わないようにしてるのかもしれない。幸せは決めつけないほうが、意外と肩の力を抜いて生きられるんじゃないかなって思うんです。

岩崎:結局人間って、自分がやりたいようにやってると思うんです。そして、その結果が今の自分の環境を作っている。例えば人前で発言することが苦しい人は発言しないことを選択するし、「あの時言えなかったな~」って思うのが嫌だから発言することを選択する人もいる。そのシチュエーションがドラマチックであろうがなかろうが、自分は好きなほうを選択してる。つまり、すでにみんなは自分の物語を生きてるんですよ。そのことに自覚的になって「あ、今も生きてるじゃん」って気づく、それで僕はいいと思ってます。

(ライター・西澤千央)

AERA 2022年8月1日号