鋼のメンタルになった

吉岡:確かに、今回の役は「受け」ですね。それって私自身の仕事に対する姿勢とも近いなと思います。自分の考え以上に、演出家さん、作品、お客さんのほうを大切にしたいと思っているので。でも、ここ最近は「受け」側の役のオファーが来なかったんですよ。

岩崎:それはどうして?

吉岡:たぶん、演じる役が大きくなるにつれて背負う責任も大きくなって、鋼のメンタルになっちゃったんです。「これくらいなら平気だろう」のラインがだいぶ高くなっちゃったというか。だから、今回の台本を初めて読んだ時も、スルメが丘のみんなに対する恐怖や戸惑いは少なかったんですよ。でも、う大さんが考える緑はもうちょっと年相応で等身大で、考えが浅くて、可愛らしい。それは私が年々失ってしまったところだなと思います(笑)。

――10代の頃に演劇と出合い「こういう仕事がやりたい!」と芸能界の門を叩いた吉岡。まずは名前を覚えてもらうことから……と様々な仕事に取り組む中で、3年ほど前からようやく本来自分がやりたかった舞台の仕事ができるようになった。

吉岡:とくに今回の舞台は、言葉の一つひとつに思いを乗せることが求められたり、すごく細やかな部分に重点が置かれています。う大さんの稽古には私が望んでいた丁寧さがあってありがたいんです。

岩崎:僕のところは他より読み合わせが多いんですよ。世界観を自分の中で確固たるものにしてほしいから。とくに今回の緑という役は、吉岡さんに当て書きしたものだから、もう僕の中に映像があるんです。コメディーの台本って正解が割とはっきりしてるんですよね。お客さんが先読みしちゃうから、気持ちよりもテンポが優先になるし、そのテンポに合わせる気持ちを作ってほしい。自ずと演出は細かくなっちゃうんです。

インスタ乗っ取られて

――ソフトボール、予言……いくつものメタファーが織りなす物語は、いつしか観る者に「自分の物語を生きる」ことの大切さを気づかせる。

岩崎:予言はこの話の中ですごく大事な要素です。予言というか運命というか、それが心の平穏を保つこともあれば、それによって苦しむこともあったり。

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