■行間と比喩が持ち味

渡邉:ドラマは50分ありますけど、音楽は短い時間のなかに物語を作りますよね。難しくはないですか?

中村:いまはもっと難しい。いま若者が耐えられるのって5秒だから。5秒で心をつかまないと、すぐに「次!」って。

濱田・渡邉:確かに……。

中村:吉田の詩の持ち味は、行間と比喩なんです。2番、3番と聴いて「ああ、そういうことだったのか」って、ぞわぞわっとなる。でも5秒だと比喩が回収できないまま終わっちゃう。それにいま「わかんないものはダメ」という人が多いでしょう。でもいまの時代に対応しなきゃいけないと、いろいろ考えています。その答えのひとつが、5話目用に書き下ろした新曲かもしれませんね。

濱田:音楽を作る際に映画やドラマからインスピレーションを得ることもありますか?

中村:インスピレーションというか、曲作りで「あの映画のこのシーンみたいな感じ」というのはよくある。僕も吉田も映画が大好きだから。例えば「ノッティングヒルの恋人」のシーンで季節が夏から冬、春へと変わっていく「ああいうテンポ感の作品にしたいね」とか。ジュリア・ロバーツがヒュー・グラントの前で「私もただの女よ、好きな人の前に立って愛してほしいと願っている」というシーンの感じを曲にしよう、とかね。

濱田:やっぱり映像と音楽は、密接に関係しているんですね。

(構成/フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2022年7月18-25日合併号