コロナ禍をきっかけに、深刻な社会問題になっている「孤独」。特に孤独感を感じているのは中高年男性だという。背景には何があるのか、どのような対策が必要なのか。AERA 2022年7月4日号の記事を紹介する。
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コロナ禍では「孤独」も社会問題化した。特に40、50代を中心とする働き盛りの「孤独感」が、他の世代より深刻さを増している。
東京都健康長寿医療センター研究所が2020年8~9月と21年9~10月の2回、全国の男女約3万人を対象に孤独感などに関するインターネット調査を実施した。その結果、40代は約7ポイント、50代は約10ポイントも孤独感が悪化。いずれも、他の世代に比べ顕著だ。調査をした同研究所の村山洋史研究副部長は、こう分析する。
「コロナ禍でオンラインを活用した会議などが継続していますが、40代、50代はそこまでオンラインやSNSを使ったコミュニケーションに慣れているわけではありません。オンライン会議だと、部下の近況や思いを聞くなどの雑談も難しくなり、なかなかうまくつながれない。自分の気持ちを表出するのもなかなか難しい。こうした状況から、どこか自分だけ取り残されたような感覚を持ってしまう面もあるのかもしれません」
コミュニケーション専門家として活動し、孤独・孤立問題を研究する岡本純子さんは、特に中高年男性の孤独感が増しているとして、こう話す。
「背景として、まず社会的要因として日本企業のシステムがあります。年功序列制度という『縦割り社会』のなか、フラットなコミュニケーションができづらい環境にあります。さらに文化的要因として、中高年男性は『孤独をよし』とする価値観に縛られ、孤独は『自己責任』だと考えているのも一因です」
医療関係者の間では、孤独は「万病のもと」と考えられている。海外では孤独がうつや心臓病、認知機能の低下など精神的・肉体的な病気のリスクを高めるという研究結果が数多く報告されている。人間は社会的動物で、個人は絶えず他者との関係において存在している。それが、人とのつながりをなくし孤独が常態化すると、心身に強いストレスを与えるからだと見られている。孤独を抱えた人が、アルコールやギャンブルに走る傾向が強いのも特徴だという。とりわけ岡本さんが問題だとするのが、慢性的な孤独を抱えると社会に不寛容になる点だ。