「孤独になればなるほど自分を守ることに必死になり、自分を客観的に認知するメタ認知ができなくなっていきます。その結果、社会に対して敵愾心(てきがいしん)を持ったり、人間に対して悪意を抱いたりするようになります」

 大切なのは、孤独のリスクを社会全体で認識することだ。昨年2月、「孤独・孤立対策担当大臣」が設置された。孤独を専門的に扱う閣僚は英国に次いで世界で2例目。日本でも孤独に社会の問題としてどう取り組んでいくかが注目されているが、成果はまだ見えない。

 岡本さんによれば、上からの押しつけだと男性はプライドが邪魔をして反発するだけで、官民挙げた対策が不可欠だ。

「英国の孤独対策はボトムアップです。民間NGO(非政府組織)などが中心となって中高年が集まるサークル活動などを開催し、国はそこにお金を出します。同じように日本も、NGOなどが地域や家族の代わりとなって家や会社以外で他人とつながりを感じられる居場所づくりを行い、そこに国が支援する形が大切です」(岡本さん)

AERA2022年7月4日号より
AERA2022年7月4日号より

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年7月4日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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