健常児なら日常の光景でも

 小学校1年生になったばかりのお子さんだったので、学校の話を聞きながら、手をつないで公園まで行きました。歩いている間も、好奇心旺盛な彼は、ひこうき雲を見つけたり、しゃがみ込んでコケを見たり、ちょうちょを見て喜んだりしていました。

 そして公園に着くと、ブランコの押し合いをしたり、鉄棒で逆上がりの練習をしたり、木にいたアリの動きをじっくりと観察したり……。

 恐らく、健常児ならごくごく日常の光景なのだと思いますが、我が家の次女には全く無い経験でした。

 友人の子どもが乗ったブランコを押しながら、次女がよく「アスレチックに行ってみたい」と言っていたことを思い出しました。我が家は年子なので、長女や息子の手が離れた頃には、次女はもう公園を卒業する年齢になっていました。

大人にもたくさんの気づき

 インクルーシブ公園の特徴は、「障害児(者)のため」に造られたのではなく、すべての子どもたちが一緒に遊べるユニバーサルデザインであることです。

 日本の教育の現状は、まだまだインクルージョンとは言い難い部分があり、あらゆる個性や障害を持つ子どもを知らないまま大人になることも多くあります。

 公園に多様な子どもたちが集まることで相互理解が深まり、子どもだけでなく、地域で暮らす大人にもたくさんの気づきを持ってもらえることが期待できます。

 そして、もしも、当時の我が家の近所にこんな公園があったら、次女だけでなく、きっと息子も楽しめたのだと思います。

隣駅の店舗への大冒険

 そんな中、医療的ケア児の長女が通う特別支援学校では、校外学習として、数名で大手家電量販店を訪れました。事前に先生が社会見学のために店舗を訪れたいと伝えたところ、当日、副店長さんがひとりひとりにスタンプを押して下さったそうです。

 いつもの学校を出て、クラスの友人たちと一緒に電車に乗り、隣駅の店舗へ行くことは、長女たちにとっては大冒険です。そして周りの方々の温かさを、彼女たちはしっかりと感じ取ります。気兼ねなく出かけられる優しい環境が整っていくことを願っています。

 1年で一番過ごしやすい季節が、誰にとっても楽しい日々となりますように。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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