砧公園の複合遊具(小林保子鎌倉女子大学教授提供)
砧公園の複合遊具(小林保子鎌倉女子大学教授提供)

「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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障害のある子も無い子も一緒に

 すっかり暖かくなりました。もうすぐGWですね。過ごしやすい気候になると、外の空気に触れたくなります。

 今回は、障害のある子どもや家族のお出かけ事情について書いてみようと思います。

 近年、話題になっている「インクルーシブ公園」をご存じでしょうか?

 障害のある子も無い子も、同じ場所で同じ遊具を利用することができるように設計された公園です。

 アメリカやヨーロッパでは取り組みが進んでいますが、日本ではまだ始まったばかりです。

車椅子のまま入れる遊具

 私がインクルーシブ公園のことを知ったのは、2020年1月のAERAの特集記事でした。シート型や円盤型のブランコや、車椅子のまま中に入ることができる複合遊具、目や耳が不自由でも音や感触を楽しめる楽器遊具などが紹介されていました。

 地面はゴムチップで舗装されているとのこと。ゴムチップはベビーカーや車椅子でも移動しやすく、柔らかいので転倒してもケガをしにくく、さらに水や汚れに強いという優れものです。

 また、発達障害のお子さんたちが集中して遊びやすいようにエリアを区切ったり、急に外に飛び出さないように囲いを設けたり、誰もが安心できる休憩スペースを取ったりと、たくさんの工夫が施されている公園もあるそうです。

 機能面でも心の面でも、バリアフリーな公園ができたことをうれしく思う一方、公園に縁がないまま育ってしまった我が家の子どもたちのことが浮かびました。

近くても行けない公園

 数年前まで住んでいた家は、すぐ近くに公園がありました。でも、公園の入口には10段ほどの急な階段があり、気軽に行かれる場所ではありませんでした。

 当時、幼稚園児だった次女は何度も公園に行きたがりましたが、まだ歩けなかった息子と、バギーに乗った長女をひとりで連れて行くのは不可能でした。

 さらに震災直後の余震が続いている時期だったため、長女や息子のお昼寝中にサッと行くということも、厳しい状況にありました。

 そんな生活をしていると、公園は我が家から遠い存在になり、いつの間にか次女も「行きたい」と言わなくなりました。でも、その数年後、たまたま友人の子どもを預かり二人で公園に行った時に、改めて考えさせられるできごとがあったのです。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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