元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 コロナの検査陽性者は減るようで減り切らず、だが戦争勃発で話題はズズイと端っこに。でも天邪鬼な私はこの機にコロナ報道についてかねて考えていたことを書きたい。

 騒ぎが長期化すれば世間の危機意識は薄れてくる。なので、まだ危険はいっぱい! 気を緩めるな! と情報発信する意義はわかる。先日のアエラでも「コロナで認知症リスク増」の記事。認知症を何より恐れる高齢者には関心も高く「効く」話題であることは疑いなかろう。

 でも記事を読む限り、素人ながら幾つか疑問が湧いた。

 そもそも高齢者が病気や入院で認知機能を下げるのは一般的な話で、それを、ことコロナについて危険を強調することにそれほど意味があるのだろうか? また「正しい感染対策」の結果交流の場を失い、家や施設にこもって認知機能を下げる高齢者も大勢いる。それをどう考えるのか?

 危険の存在を知らせて対策を呼びかけるメリットと、恐怖情報が別の問題を引き起こすデメリットと。今や我らこのウイルスとともに生きてかなきゃならんこと確実であることを考えれば、そのバランスが肝要だ。「脅し」で問題解決を図る段階はそろそろ卒業の時と私は思う。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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