だが、半ば新参者の木戸浦が関係者に腹案を話しても、誰も相手にしなかった。「ライバルどうしの造船所の合併? 無理だね。夢のまた夢」とあしらわれる。木戸浦、吉田、澤田、小鯖の4社はいずれも100年前後の社歴を誇り、親代々、しのぎを削ってきた。木戸浦と吉田は新造が主体で、澤田と小鯖は修繕に特化していたが、それぞれ船主と深い絆で結ばれ、受注競争ではガチンコのたたかいをくり広げた。壁は厚い。このままでは共倒れになる、と木戸浦は憂えた。そこに震災が襲いかかったのである。

 震災の年、木戸浦は気仙沼市震災復興市民委員会のメンバーに選ばれた。造船所と関連業者を集約した「造船団地」の建設を提言し、統合への狼煙(のろし)を上げる。市は造船業の再生を掲げ、国土交通省海事局やデロイト トーマツが支援に回った。

(文中敬称略)

(文・山岡淳一郎)

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