NHK「ニュースウオッチ9」では、温かな語り口と視聴者に問いを投げかける報道姿勢が支持を集めた。退任した53歳のときフリーへの転向は考えなかった。だが、定年退職後にニュースキャスターに戻る自分は想像していたと言い、キャスターの仕事に対しても自信をのぞかせた。とはいえ、「報道ステーション」から話がきたときは驚き、喜んだ。

 民放というマウンドでどんな新しいテーマに挑むのだろう。

「地球が悲鳴をあげているこの時代に、僕らの子や孫の世代は、気候変動やAIが人間を凌駕(りょうが)する世界など、未知の領域に入っていきます。彼らにどんな武器を持たせてあげられるか、どれだけ前さばきをして、いばらの道を刈り込んであげられるのか。せめて僕らが時間稼ぎをしてあげたい。危機感を正しく共有し、地球の悲鳴という大きなテーマを大真面目に青臭く伝えるのが仕事です」

 局からは持ち味を生かすよう求められている。大越さんらしさを問うと、楽観的な性格そのものに笑ってこう答えた。

「例えば、一緒に仕事をする人たちをすぐに好きになったり、取材先の人ともっと話がしたいと思ったり。わりと惚れっぽい。かつ、あんまり騙された経験がないんですよね」

 コロナ禍の先は見通せず暗いニュースが続くが、絶望の中にも希望を伝える報道が見られそうだ。(ノンフィクションライター・三宅玲子)

AERA 2021年10月25日号