元NHKの大越さんが10月から「報道ステーション」の新たな顔に就任した。活躍の場を
民放に移し、何をどう伝えていきたいか。AERA 2021年10月25日号では、「報道ステーション」メインキャスターの大越健介さんに話を聞いた。
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久しぶりの現場で運命的なものを感じたという。
「これからの政治には大きなテーマに挑んでほしいし、伝えていきたい。そう話したのが、岸田内閣の発足を伝えた番組初日です。翌日、偶然ハマったかのように、気候変動に関する日本人の研究がノーベル物理学賞を受賞。そして、4日目の今夜、地震が起きました」
■性格形成に野球が影響
「報道ステーション」のメインキャスターに就任したばかりの元NHKの大越健介さん(60)にインタビューしたのは10月7日深夜。生放送中に首都圏で最大震度5強を記録する地震が発生。急きょ、番組を1時間延長して伝えた直後だった。
まだややぎこちなさは見受けられたものの、本人は意に介さずだ。初登板をこう振り返った。
「生意気なことを言うようですけど、錆(さ)びてないなって」
子どもの頃から楽観的な性格だ。性格形成には野球が影響している。県立新潟高校でピッチャーとして春の県大会準優勝、夏の大会ではベスト8の結果を残した。野球の強豪大学では埋もれてしまうからと大学は東京大学文学部へ。東京六大学野球の新人戦で立教と法政に勝利した。
「他の大学の選手はみんな到底及びもつかない経験者や甲子園のスター。こんな小さい身体で彼らに挑むわけです。それが、もしかして通用するんじゃないかなって思ってやってみたら、ほんとにできちゃったんですよ」
こうした経験を積み重ねてきたからなのだろう、失敗にくよくよするより、成功体験を積み上げていくことを好み、その前提に基づいた行動習慣が身についているという。
■共有できることを見る
「だから世の中の見方も楽観的なんです。世の中に対する怒りや正義感をエネルギーに報道する記者もいますが、僕は対立に目を向けるより、共有できることに目を向けた方が世の中は概してうまくいくという考えです」
例に挙げたのは中国と日本の関係だ。
「今は決してよい状況ではないし、米中という関係の枠の中に日本は取り込まれていかざるを得ない。けれど、中国の人と話してみれば、同じ人間だし感情の動物だってことがわかります。ちょっとだけある理性で悩んでいるのも同じなんですね。そういうところに視線を向けた方が物事はうまくいくと思ってるんです」