「逆カルチャーショック」というものがあります。外国生活になじんでから母国へ帰ってきて、逆に生まれ育った国の文化に違和感を覚える心理ですが、約5年間のアメリカ生活ののち日本へ帰ってきたわたしもこの逆カルチャーショックを日々体験しています。そのうちのひとつが、子連れでの外食です。
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近所で評判のピザ屋さんに行ったときのことです。創業50年超の老舗で、価格帯も手頃。中でもチーズピザが絶品だとかでわくわくしながらお店のドアを開けると、店主らしき人が出てきてこう言いました。「お子さん連れですか?」明らかに渋い顔をしています。はい、子どもふたりです。入れますか? と尋ねると、「お子さん、じっとしてられますか?」とのこと。5歳の娘はまだしも2歳の息子は活発で「じっとしてる」と言い切ることはできません。というか、これはもう遠まわしに「子連れは困る」と言われているんだろうなと感じて泣く泣く店を出てきました。そのときに遅まきながら思い出したのです。ああ、日本で子連れ外食をするには事前リサーチが必要なんだった、と。
アメリカに住んでいるとき、何回か日本に一時帰国したことがありました。「お互いの子どもを連れて久々に会おう!」と、同じくママになった女友だちに連絡すると、いつもこんな答えが返ってきました。「わかった、子連れでもよさそうなお店を探して予約しておくね」。それが当時のわたしには不思議でなりませんでした。子連れでもよさそうなところって、わざわざ探して予約しておかなきゃいけないもんなんだろうか? と。そう、いけないもんなんですよね。
日本に本帰国した今ならわかりますが、特に都市部で子連れ3組以上で集まろうとしたら、お店のリサーチは必須といっていいでしょう。ベビーカーを置くスペースやキッズメニュー、ハイチェア、おむつ交換台の有無もですが、そもそも子連れで入ってもよさそうな雰囲気なのか否かがとても重要になります。たとえ店内が狭くても、価格帯が高めでも、子連れ歓迎な雰囲気のお店もあれば、前述のピザ店のように一見気楽なお店なのになんとなく子連れ向きではない場所もあるからです。ですから事前にネットの口コミを見るなりお店に問い合わせるなりして、雰囲気を確かめなければなりません。わたしの女友だちは、そうやって手間をかけて子連れOKの店を探してくれていたのでした。
対してアメリカでは、そんな苦労をすることがありませんでした。アメリカといっても広いですが、地方はもちろんのこと、わたしが住んでいた比較的大都市であるシアトルもそうでした。シアトルはアメリカのなかでも人口密度が高いし、狭いお店も多いし、ファミリー層から子どもがそんなに好きではない層までさまざまな人が暮らしているしで、日本に近い環境にあります。それでも大抵のお店は子連れで入れるので、事前リサーチなど不要でした。ピザ釜がある本格的なピッツェリアとか、地ビールが評判のブルワリーとか、高級志向の南部料理店とか、日本なら大人向きカテゴリーに入る類のお店も子連れ客で賑わっていました。その理由をひとつ挙げるなら、「飲食店にとっていちばんの上客が子連れだから」ではないかと思います。