大塚篤司医師/近畿大学医学部教授
大塚篤司医師/近畿大学医学部教授

 炎症を抑えるステロイド薬への間違った認識から、いまだに不安を持つ人は少なくない。脱ステロイドよって弊害をもたらしかねないだけに、正しい認識と使い方を知っておきたい。AERA 2021年10月18日号で、医師が解説する。

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 9月7日、日本テレビのバラエティー番組「ザ!世界仰天ニュース」で、ステロイド薬を使用せず肌荒れを克服した女性の体験談が取り上げられた。これに対し、14日、日本皮膚科学会など七つの団体は「科学的に明らかに根拠のない内容」と連名で抗議。同日、日本テレビは同番組内や公式サイトで謝罪した。

 ステロイドは体内の副腎で作られるホルモンのひとつで、体内の炎症を抑えたり、免疫を抑制したりする作用がある。これを薬に応用したステロイド薬はアトピー性皮膚炎などさまざまな疾患に使われる。

■症状悪化の患者が急増

 1990年代、「脱ステロイド」報道が過熱化し、脱ステロイドを謳う医師・民間療法が多数登場。ステロイド外用薬を急にやめてしまい、症状が悪化した患者が急増した。

 混乱を鎮めるべく、日本皮膚科学会は2000年、「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」を初めて発表した。

 だが、いまだにステロイドに不安を持つ人は少なくない。

 近畿大学医学部教授の大塚篤司医師はこう指摘する。

「ステロイドの間違った情報がインターネット上にたくさん流れています」

 例えば、いまもインスタグラムで「#脱ステロイド」と検索すると、“脱ステロイド中”として真っ赤に腫れた肌の赤ちゃんの写真が多数出てくる。

 背景には、ステロイドの副作用に対する間違った認識がある。

 たとえば、「ステロイドを塗ると皮膚が黒くなる」。これは、皮膚の炎症による色素沈着で、炎症が治まれば徐々に消えていく。

 ステロイドには血管収縮作用があり、強いステロイドを皮膚の薄い顔に塗り続けると、皮膚が白く薄くなったり、かゆみや赤み、ブツブツなどが表れる「酒さ様皮膚炎」という副作用が起こり得る。副作用が起こらないよう使い方が改良され、ガイドラインに顔に強いステロイドを塗り続けないことが明記された。ステロイドとは作用機序が異なる薬も登場している。

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