年齢別即時型アレルギーの原因食物(AERA 2021年10月18日号より)
年齢別即時型アレルギーの原因食物(AERA 2021年10月18日号より)

「ステロイド薬で、体内(副腎)でステロイドが作られなくなる」も、誤解。

「アトピー性皮膚炎の標準治療で使われる外用薬で副腎機能が落ちることは極めてまれ。外用薬は皮膚だけで効果を発揮し、全身性の副作用は起きません」(大塚医師)

 ステロイドの内服薬も短期間であれば副作用の心配が少なく、数週間以上飲む場合は、医師の管理のもと慎重に投与される。

 脱ステロイドが招く弊害は、症状悪化だけではない。

 顔の激しい炎症で目の周りがかゆくなり、こすったり叩いたりしてしまうため、白内障や網膜剥離のリスクが高まり、最悪の場合、失明に至りかねない。細菌感染やヘルペス感染による敗血症のリスクも上がる。アトピー性皮膚炎の悪化で、休学や休職、退学や退職を選択せざるを得なかった人もいる。

■安全な使い方確立

 かつては、ステロイドは症状が悪化した時だけ使う薬だった。だが、現在は安全に、より効果を高める使い方が確立。湿疹が治った後もステロイド外用薬を間隔を空けながら塗り、再燃を抑える「プロアクティブ療法」が標準治療だ。皮膚の下の炎症の状態がわかる血液検査「TARC(ターク)」も保険適用となり、薬を減らすタイミングを客観的に評価できる。

「私の経験では、大学病院に来る悪化したアトピー性皮膚炎患者さんを含めても、FTU(1回に塗るステロイド外用薬の量)の指導とプロアクティブ療法で6~7割はほぼ改善し、最終的には保湿剤だけになる人もいます。ステロイド外用薬だけで十分な効果を得られなくても、重症患者対象の新薬も登場しています」

 アトピー性皮膚炎は「治る」時代になったといえる。だからこそ、誤解を排し、正しく理解できるようにすることが肝要だ。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年10月18日号