■一人で抱え込まない

「相手に精神的苦痛を感じさせることは、同調圧力でありハラスメントに該当します」

 と指摘するのは、一般社団法人「日本ハラスメント協会」の村嵜(むらさき)要代表理事。企業のワクチンハラスメント(ワクハラ)相談にも乗る村嵜さんは、必要以上に接種を迫るのはもちろん、あいさつがわりに「ワクチン打った?」と聞いても、同調圧力に該当する場合があると言う。

「会社のトップが、同調圧力やワクハラはあってはいけないというメッセージを発することが重要です」(村嵜さん)

 では、ワクハラに遭った時はどう対処すればいいのか。

「まずは会社の総務部など管理部門に相談し、真剣に向き合ってくれない場合は、会社のハラスメント相談窓口に相談するのがいいでしょう。それには、一連の流れを記録に取っておくことが大事です。家族や友達に相談したり、SNSで思いを発信したりすることも有効です。何より、一人で抱え込まないこと。ガス抜きも重要です」(同)

 先の佐藤弁護士は、接種を他者が強制すれば、憲法が保障する「自己決定権」の侵害になりかねないと話す。「ワクチンは自分の健康や生命にかかわってくる問題で、自己決定権は尊重されなければいけません。強制や排除は、人権の侵害です」

 ワクチンを接種しなかったことで「解雇」や「降格」といった明らかな不利益処分を受けた場合は、損害賠償請求の対象になるという。佐藤弁護士は言う。

「ワクチン接種で大事なのは共有です。打ちたくても様々な事情があって打てない人がいることを、職場や学校など社会全体で共有することが大切です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年9月27日号

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野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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