コンプレックスを武器に、建築の常識を変える 建築家・起業家 谷尻誠<現代の肖像>

2021/06/12 16:00

建築家・起業家 谷尻誠/建築誌で大きく紹介された2020年完成の自宅のリビングで。こだわりが詰まった家だ(撮影/今村拓馬)
建築家・起業家 谷尻誠/建築誌で大きく紹介された2020年完成の自宅のリビングで。こだわりが詰まった家だ(撮影/今村拓馬)
建築のアイデアは、意外にも言葉から作るという。「矛盾している言葉を作ることが多いですね。懐かしい未来、とか」。スタッフとミーティングを重ね、アイデアをブラッシュアップしていく(撮影/今村拓馬)
建築のアイデアは、意外にも言葉から作るという。「矛盾している言葉を作ることが多いですね。懐かしい未来、とか」。スタッフとミーティングを重ね、アイデアをブラッシュアップしていく(撮影/今村拓馬)

 建築家・起業家、谷尻誠。近代的な高層ビルの中に、下町の横丁のようなフードコートを作ったり、施主が仕上げを担う未完成の家を造ったり。谷尻誠が手掛ける建築は、常に大胆で斬新な発想で世間を驚かせてきた。今や引っ張りだこの、注目の建築家だ。仕事がない時代もあったが、後輩の死をきっかけに目が覚めた。新しい建築の世界を、今まさに切り開いている。

【写真】建築のアイデアは、意外にも言葉から作るという

*  *  *
 東京都港区にある地上36階建ての高層ビル・虎ノ門ヒルズのビジネスタワー3階。まるで下町を彷彿とさせるような空間は「虎ノ門横丁」と呼ばれるフードコートだ。名店が集まっているが、もっと気軽に楽しめる空間にしようと谷尻誠(たにじりまこと)(47)が新時代の横丁を提案した。近代的高層ビルに横丁の組み合わせは、映画「ブレードランナー」の世界観からヒントを得た。

 東京・渋谷の公園通りにある「hotel koe(eはアクセントつきe) tokyo」は、アパレルと飲食店とホテルの三つの機能を組み合わせた新業態のホテル。これは、都心で高額の家賃を払っているのに1日8時間しか営業していないのはもったいない、と谷尻がアパレルメーカーにホテル空間での展開を提案したものだ。

 2014年に手がけた大阪の商業施設「ビオトープ」の改装では、外壁は入居する古いビルのタイルをはがしただけ。谷尻自身も、どんな外壁になるかわからなかった。通常、大規模な商業施設となれば、模型やCGで、どんなものができるかを徹底検証する。しかし、ここに今の建築設計の課題があると谷尻は見た。

「ワクワクしないんですよ。予定調和だから。みんなの感動を少なくしてしまっている。自然界って、思いがけないことが起きますよね。びっくりするような夕焼けの美しさとか。予期できないことの連続です。もちろん、すべて予期できない建物は無理ですが、そうした側面を加えることで、新しい美しさや新しい豊かさに辿り着ける可能性があるんじゃないかと思ったんです」

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