当院には感染症科の医師が3人います。日ごろはがん患者さんの感染をケアする彼らが中心となり、感染対策のルールを作り、コロナ病棟での治療方針決定にかかわってくれています。

 いろいろな診療科の医師6人が1チームとなり、2週間単位でコロナ病棟専属になります。その期間、彼らは一切ほかの診療業務に手を出さない。その6人が通常行っている診療は、他の医師がカバーします。看護師は23人が固定で専用病棟の看護にあたります。もともと医師、看護師とも余力があったわけではありませんから、病院全体の負担は増しています。しかし、今のところ外来も手術も予定通り進めており、がん医療を守りながらコロナの患者さんを診ることができています。

 コロナ病棟からの感染波及を心配する方もいるかもしれませんが、完全に動線を分け、徹底した防護対応をしています。いろいろな病院でコロナによる院内感染が問題になるのは、感染を知らずに受け入れていた一般病棟でのケースです。すでに感染が判明していてしっかり対策がとれる専用病棟では、院内感染は起こりません。外来受診される患者さんの体温測定と問診の徹底、入院患者さんの面会禁止、職員は家族や決まった相手以外の会食禁止など、外部からのウイルス持ち込みを徹底的に防いでいます。

 当院では、昨年4~5月はがんと診断されて紹介されてくる患者さんが前年比で35%も減少しました。がんが減ったわけではなく、コロナ禍のために受診控えがおこり、がんの発見そのものが減ったことを意味します。がんは早期発見・治療が重要であると同時に、治療後も定期的な検査やフォローアップが必要です。「新型コロナの流行がなければ、どんな行動をとっていたか」を考え、どうか適切な検査・治療を受けていただきたい。

AERA 2021年2月8日号