これだけ受験者数が増えると、当然「不合格になる子」も増える。親が最も悩ましいのは、落ちた子にかける言葉だ。

 都内の中高一貫校に通う娘を持つ父親(49)は数年前にこんな経験をした。娘は中学受験大手の塾に通塾し、女子御三家を目指していたが、本人が目標としていた学校は全て不合格になった。模試での結果はいつも合格圏内にいた。第2志望の学校は試験が複数回あるため、子どもも親も、どれかでは受かるだろうと思っていた。だが想定外の結果が続き、家庭内は暗い雰囲気になった。

「同じ学校の試験が3回目、4回目となると、まるで敗者復活戦を延々とやっている感じでした」

 こんなとき親はどうしたらいいのか。『中学受験で超絶伸びる!受かる家庭の習慣』で知られる勇気づけ子育てコーチング協会代表理事のたなかみなこさんは、子どもが気持ちの落ち込みを表しても、親はそれに同調しないほうがいいと言う。親のほうが落ち込めば、子どもは親に悪いことをしたという思いまで追加されて、ネガティブな気持ちが増幅してしまうという。

「親は子どもの気持ちに共感しつつも、淡々とすることが大事です。親がグチグチと言わなければ、落ちたことを失敗として捉えずにすみ、子どもは引きずりにくくなります」

 声かけとともに、戦略も大事だと、前出の父親は言う。

「絶対に、全落ちした時のことは考えておいたほうがいいです」

 御三家狙いだったこの家庭では、万が一に備えて、偏差値的には10は下がる学校も受けていた。そこに合格したことで親子ともに救われたし、次に向かって頑張ろうという気持ちになれたという。

■受験の失敗は親が作る

 インターネット出願が主流となった昨今は、受験日の前日夜まで出願を受け付ける学校も多い。東京都品川区在住で、大学付属の中高一貫校に通う中学2年生の娘を持つ母親(45)は、入学した学校は「恥ずかしながら、願書を出すまで名前も知らなかった」と話す。

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