■PCR検査にニーズ

「医師転職ドットコム」を運営するメディウェルの担当者は、「動きが変わった」と話す。

「昨春に緊急事態宣言が出た頃、非常勤やスポットの求人が3、4割減り、いまも戻っていません。医療機関の財政状況が厳しく、県境をまたぐ出勤が認められず、解雇になった医師もいます。北海道郊外の人手が少ない医療機関は、毎週末、関東や関西の医師を飛行機で呼んで診察をお願いしていましたが、コロナの影響で都市部から医師が働きに行けず、診療科を閉めてしまったところもあります。仕事が減ったフリーランスが、常勤になることも増えた。医師も安定志向が強くなってきました」

 こうした変化に伴い、今後私たちが望む医療をこれまで通り受けられなくなる可能性は大いにあるということだ。

 一方で、コロナ禍でも収益を伸ばしているところもある。

 東京都大田区の竹内内科小児科医院は、19年9月に引き継いで以来、売り上げは右肩上がりだ。20年9~11月は前年同期比で215%。前年の経営が軌道に乗っていなかったことも理由のひとつだが、1日の患者数は50~60人で、予防接種シーズンは100人を超す日も珍しくない。五藤良将院長(42)は患者が増えた要因として「間口を広げたこと」を挙げる。中でもPCR検査の影響が大きいという。

 同院は、20年1月ごろ、患者の要望に応じてオンライン診療のシステムを導入。同時期に往診も始めた。コロナの感染が広がる中、院内の動線を分けて発熱外来も設置。8月からは都の要請を受けて公費でのPCR検査も開始した。周辺の医院は発熱患者を受け付けないところもあり、多くの患者が流れてくる。

「PCR検査はもともと患者さんからの問い合わせが多く、ニーズを感じていました。地域で必要とされる医院でありたい」(五藤さん)

 命を守るのが医療でも、収益なしには継続できない──。突き付けられた課題は大きい。(編集部・深澤友紀、ライター・井上有紀子)

※AERA 2021年1月25日号より抜粋