コロナ対応で多忙な医師がいる一方、多くは受診控えなどで患者が減っている(撮影/写真部・小黒冴夏)
コロナ対応で多忙な医師がいる一方、多くは受診控えなどで患者が減っている(撮影/写真部・小黒冴夏)
AERA 2021年1月25日号より
AERA 2021年1月25日号より
AERA 2021年1月25日号より
AERA 2021年1月25日号より

 コロナ禍で医師の就労環境に変化が起きている。患者の受診控えによる病院経営の悪化、医師の収入の減少など課題は山積みだ。「医師と医学部」を特集したAERA 2021年1月25日号から。

【アンケート】新型コロナで「50万円以上の減収」と答えた医師は2割以上!

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 コロナ禍で、医師たちの就労環境にひずみが生まれ、それが新たな医療崩壊につながろうとしている。

 関西の大学病院に勤務する麻酔科医は、感染者が増えてきた昨年12月下旬から、新型コロナウイルスの重症患者も担当している。防護服を着て、年末から満床が続くICU(集中治療室)へ。気管内挿管や人工呼吸器の管理、静脈への点滴を行う。患者の体の向きを変える際、誤って点滴が外れたら容体の急変もあり得るため、緊張が続く。防護服の下は汗だく、脱水症状で足元もふらつく。

 仕事のあとは院内でシャワーを浴び、子どもを保育園に迎えに行く。防護服から露出していた首と顔の一部にウイルスがついているかもしれないと思うと、子どもを抱きしめていいのかわからない。保育士はこの1年近く、自分がコロナ患者を担当しているのか、知りたそうにしている。「個人情報なので」と答えるのもつらく、話しかけられないよう、逃げるように帰る。

■気分転換も非難され

 国民がGoToキャンペーンを使い旅行や外食を楽しんでいても、気を緩めずに働き続けた。感染状況が下火になった昨年10月、せめて気分転換をしようと近所のジムに行ったら、顔見知りに「なんで医療関係者がいるんだ。このジムは意識低いな」と騒がれてしまった。

「『医療従事者ありがとう』というけれど、本心は近寄りたくないんですね。悲しいけど、それが現実」(麻酔科医)

 旭川医科大学病院准教授で緩和ケア専門医として働く阿部泰之さん(48)は、コロナ患者の担当ではないが、「最後の砦(とりで)である大学病院で、自分が感染を広げてはいけない。精神的な負担は続いている」と話す。

 中学生と小学生の子どもがいるが、10月末から家族と離れて自主隔離していたところ、市内の病院で院内感染が起きた。クリスマスや年越しも一人だった。子どもたちは「虫かごにカビが生えた」「おもちゃが壊れた」などと些細(ささい)なことで電話をかけてくるようになり、「寂しい思いをさせているな」と感じる。

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