だが、日本集中治療医学会(理事長=西田修・藤田医科大学教授)は11月、専門誌に「新型コロナウイルス感染症流行に際しての医療資源配分の観点からの治療の差し控え・中止についての提言」を公表した。

 コロナ禍の中、医療資源の配分という考え方から、治療の差し控えや中止がどのように適切に行われるべきかについての提言だ。西田理事長はこう説明する。

「集中治療に従事するスタッフは、重症患者を救命し社会復帰させることを理念に診療を行っている。本来ならこのような提言は出したくないし、不要となることを願っているが、今回、満を持して提言した。命を守る最後の砦となる、いわば本丸の日本集中治療医学会がこの提言を出したことの重みをわかっていただきたい」

 その上で、西田理事長はこの提言に基づいて“命の選択”が行われることは、決して絵空事ではないと考える。特に、集中治療室は冬場、年間で最も患者の多い時期を迎える。

「第3波は時期的に最悪です。日本ではコロナでも集中治療の成績は非常に良いのですが、ハコ(ICUなどの設備)、ヒト(人材)、モノ(人工呼吸器など)の三つのうち、ハコとヒトはとても手薄になっており、患者が増えれば今の好成績は担保されない。集中治療のキャパシティーを超えてしまえば、コロナ以外の患者さんも含めて助かる命も助からなくなる。局地的に私たちの提言を使わざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります」(西田理事長)

「この3週間が極めて重要な時期だ」

 菅首相が記者団にこう強調したのは11月26日。どこまでの危機感を持っていたのかは知らないが、すでに折り返し地点に来ている。(編集部・小田健司)

AERA 2020年12月14日号より抜粋