2019年12月にPOLが催したイベント。企業を招き、AIに特化したハッカソンなどを対面で開催。学生のレベルが高いと好評だ(写真:POL)
2019年12月にPOLが催したイベント。企業を招き、AIに特化したハッカソンなどを対面で開催。学生のレベルが高いと好評だ(写真:POL)
AERA 2020年10月26日号より
AERA 2020年10月26日号より

 前例のない現状に、経済的な「いい話」はあまり聞こえてこない。だが、先が見えない時代だからこそ、先を見据える学生が求められる。企業が理系学生をターゲットにするには理由があった。「採用したい大学」を特集したAERA 2020年10月26日号から。

【企業が実際に検索した「欲しい理系人材」のキーワードはこちら】

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 新型治療薬として期待される「アビガン」の製造からテレワークの支援まで行う富士フイルムホールディングス。今年は学生からのエントリーが増えたという。

 採用は当初からドキュメント事業におけるシステムエンジニア(SE)を中心に、54人の大幅増員をする予定だった。コロナ流行後も、変更なしの強気の姿勢だ。

 同社人事担当者が言う。

「オフィスのデジタル化を通じてお客様の課題解決を支援するビジネスに力を入れています。コロナ禍のテレワーク普及で、ますます需要は高まっています。今後の売り上げ拡大と体制強化のため、採用人数を増やす計画は維持しました」

 業務効率化のためのデジタル化をサポートするのが同社の売り。SEは欠かせない。

「当社は事業領域が広いため、理系では多様な専攻の人材を求めているが、特に情報系の採用を強化したい」(担当者)

 アビガンは安倍晋三前首相も「有効性が確認されれば、承認をめざしたい」と5月に会見で述べていた治療薬だ。注目を集めている。

「アビガンだけでなく、米企業からのコロナワクチンの製造受託、PCR検査の試薬の提供などの感染拡大防止のための当社の取り組みが、メディアで報じられ、社会課題の解決に技術力で挑戦し続ける企業姿勢を就活生にも感じてもらえているのではないでしょうか。結果的に、昨年より多くの学生さんからの応募がありました」(同)

■学生検索で「一本釣り」

 前例のないコロナ禍に、企業が視線を注ぐのは、優秀な理系学生だ。企業は対面ではなくオンラインでの採用活動が続くが、そんな時期だからこそ学生と企業をつなぐウェブサービスも注目を集めている。

 2016年に現役東京大生が創業したPOL社がローンチした理系特化型スカウトサービス「LabBase(ラボベース)」も、その一つ。3万人を超える理系学生がプロフィルやポートフォリオを登録し、企業側はそれら登録された情報からほしい学生を探し出す、いわば理系学生マッチングサービスだ。同サービス責任者の岡井敏さんは言う。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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