「大勢の学生に声をかけるマス型採用と異なり、学生のスキルを見ながら一本釣りできます」

 では、企業はどんなスキルを持った人材を探しているのか。その指標となるのが、企業が学生探しで検索するキーワードだ。その上位の言葉を一覧にまとめた。最も多かったのがAIの分野では欠かせないスキルの「機械学習」だ。ほかにも「ハッカソン」や「自然言語処理」「Kaggle」など、企業がターゲットにしたい学生の特徴がわかる。

 登録者のうち3割以上を東京大や京都大などの旧帝大の学生が占め、東京工業大や奈良先端科学技術大学院大のように理工系に特化した大学層も厚い。創立4年目のサービスながら、メルカリやソフトバンク、パナソニックなど大手企業も活用。先の富士フイルムも採用手法の一つとして取り入れている。岡井さんが言う。

「理系といえば大学研究室の推薦枠などもありますが、今必要とされている高度IT人材のような新しい分野では旧態依然のコネは利かなくなっています」

■数学専攻のニーズ増

 利用する学生にとっても、想像しなかった企業と出合うきっかけになっている。

 同志社大学理工学研究科2年生で応用数学を研究する中澤朋亮さんは来春、AIエンジニアとして大分県の地域科学研究所に入社を予定している。企業との出合いは、ラボベースでのスカウトだった。

「企業が星の数ほどあるなかで、見つけてもらう場所として使っていました。全部で13社からメッセージが届き、5社から話を聞きました。市場分析などをするクオンツに興味はないかというメッセージを三菱UFJ銀行さんからもらったときは、自分では選択肢にすることはない分野だったので面白かったです」(中澤さん)

 かつては理系人材のなかで数学専攻は就職できない分野と言われることもあった。だが、その風向きは変わった。コロナ禍でニーズが広がっている。

「AIやデータ分析の根本は数学です。就活をしていて、それを見抜いている企業は数学科であることを取り出して選考していたように感じています」(同)

 前出の岡井さんによれば、コロナ禍に見られる傾向として、オンライン採用が強まり「地方学生のメリットがより高まった」と話す。ラボベースは、前年と比べて9月初旬までに2倍近いペースで登録され、スカウトの承諾率も上昇した。(ライター・井上有紀子、編集部・福井しほ)

AERA 2020年10月26日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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