コロナ禍では、ひきこもりの人以外でも外とつながる機会の喪失を余儀なくされた。その疑似的な体験がプラスに働き、ひきこもりへの理解につながりつつある。「コロナ禍の8050問題」を特集したAERA 2020年10月19日号から。
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コロナ禍が与えた影響には、実際の支援体制だけではなく、「空気」のようなものもある。
ひきこもりの支援活動に携わる白梅学園大学教授の長谷川俊雄さん(64)は、コロナ禍がきっかけで当事者と家族の関係性がいい方向に転じたケースもあると指摘する。30代の子どもがひきこもっている60代のある親は、子どもを理解できず批判ばかりしていた。しかし自粛生活で職場復帰できるか不安な日々の中で、ふと「子どもの心情も同じではないか」と思ったという。
「今まではひきこもっている人たちが、異端や少数派とラベリングされていましたが、外出自粛で『社会そのものがひきこもった』ことで、一時的に緩和されているんです」(長谷川さん)
コロナ禍で、ひきこもり「以外」の人たちも、ひきこもりの「疑似体験」をしたのだという。
「それを疑似体験だと感じられた人は、ひきこもりの人のことを深く理解できる。多くの人が仕事がなくなったり、家にずっと居続けるのは不安だなという体験をしたことで、共感的な態度をとれるケースがある。コロナで居心地がよくなったという人は、ひきこもりの当事者にもその親にも多いです」(同)