黒羽:親に「仕事やめようかな」と相談したら、「あなたが芸能界で活動してる人じゃなくても何も困らないから、早く帰っておいで」と言われて……。逆にその一言でものすごく気持ちが楽になったんです。いろいろなプレッシャーとか勝手に背負っていた荷物とかが、一気に落ちた感じ。最悪、帰る場所があると思ったら、もう失うものはないやと思えてスイッチが入ったんですよね。それまでは別の仕事をしている自分も想像できたけど、この仕事以外は想像できなくなって、本格的に役者でやっていく決心がつきました。

 思いきって舞台の仕事はセーブし、映像の仕事を中心に取り組む期間も作った。ところが、舞台から離れたことで、舞台の魅力に改めて気がついた。

黒羽:もちろん、映像は映像で面白いんです。でも、舞台が持っているエネルギーというか、生命を削って何か伝える感じや、本番が始まったら誰も助けてくれない、自分の力のみでやっていく感じがたまらなく大きな魅力に思えて。舞台が「好き」から大好きになりました。

■危機感も楽しんだ

 きっかけは、初めて出演したグランドミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2019年)。

黒羽:「ロミオ&ジュリエット」は、一回、オーディションで落ちたんです。2年経ってまたチャンスが来た時に、これは自分の成長を確認できるいい機会だと思った。ドラマや映画のお仕事もたくさん経験してきましたし、「ミュージカル『刀剣乱舞』」のパリ公演をやったり、18年末には刀剣男士として紅白歌合戦にも出場したり、濃い2年を過ごすなかで度胸がついたんでしょうね。演出家の小池修一郎先生に目を留めていただいて、初めて足を踏みいれたグランドミュージカルの世界は、めちゃくちゃ楽しかった。ただ、周りは歌もお芝居もすごい先輩ばかり。危機感も同じくらい感じました。「俺、このままでは終わるな」って。でも、そんな状況も楽しくて仕方がなかった。ボイトレに個人的に通い始めて、デビュー以来、ずっと演じる作品の楽曲の練習しかやっていなくて、基礎が学べていなかったことにも気づきました。いろいろなミュージカルを観て、勉強するようになりましたね。

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