努力の末、今春、帝国劇場で上演予定だったミュージカル「エリザベート」で、狂言回しの役割を担うルキーニ役をつかんだ。過去には山崎育三郎や尾上松也も演じた、実力と華、両方が必要な役どころだ。

黒羽:ルキーニと聞いて驚きました。若手俳優ならみんなやりたがる憧れの役ですし……なにより、ミュージカル界を代表する先輩たちと一緒に、僕も「エリザベート」を構築する必要なピースとされたことがすごくうれしかった。新型コロナの影響で本番はできませんでしたが、稽古期間に学んだことは、僕の中で消えない体験として残っています。

 どちらかといえば、僕は爽やかな役が多かった気がするんですが、小池先生は、なぜか悪いやつや血の気が多い役を与えてくださるんですよ。僕の何かを見抜いているのか(笑)。でも、演じていて楽しいのはそっちです。いい人でいようとする普段の自分から、解き放たれるからかもしれません。

 俳優として、今の満足度を尋ねた。

黒羽:う~ん……8%? ちょっと少なすぎるかな。でも、50%は切ってます。100%になる瞬間はいつになるんでしょう。ただ、幼いころに憧れた映像も、大好きになった舞台もやらせていただいて、体が二つあればいいのに、と思うことも増えました。それはすごく幸せなことだと思っています。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2020年9月14日号